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「……そう。でも、どの道、冒険者登録もしていない駆け出し冒険者が口出しするような事じゃないわ。身の程を弁えなさい」
女性冒険者の方も、何か思うところがあるのか、ほんの一瞬、険が和らぐ。
しかし、結局、彼女が示すのは拒絶の姿勢だった。
( ^ω^)「オゥフwwwこれは手厳しいwwwでーもーwww要は、実力を示せば良いだけですよね先輩www」
ブーンはオーバーリアクション気味に、大袈裟な身振り手振りで女性冒険者に食い下がる。
「あんたの先輩になった覚えは無いわ。怪我したくなきゃやめておきなさい。私も、あんた達に構ってる程、暇じゃないの」
女性冒険者はブーンから視線を外し、もう話す事は無い、という風に受付嬢の方に向く。
( ^ω^)「それはやってみなきゃわかんないッスよwww冒険者登録してないってだけで相手を侮るとは、先輩と言えど大した事無いんですなwww」
ブーンの煽りを受け、女性冒険者が固まる。
そして、苛つきを隠さないわざとらしい溜め息を吐き、ブーンに再び向き直る。
「……良いわ。あんたの挑発に乗ってあげる。そして思い知らせてあげるわ。あんたのその自信を叩き折って、思い上がっていたって事をね…!!」
離れていても感じ取れる程の苛つきと怒り。
ドクオは内心で、ヒヤヒヤしながらも、傍観者に徹した。
徹していた、つもりだった。
( ^ω^)「やる気になってくれたようで何よりwwwと言うワ・ケ・で!!www出番だぜドクオ!!www」
あろうことか、ブーンは散々、相手を煽りに煽った挙句、ドクオへと丸投げして来た。
(;'A`)「俺がやるんかい!!」
すっかり怒気増し増しの鋭利な視線がドクオに向けられる。
( ^ω^)「だってお前、この人と戦いたがってたじゃんwww」
正直言えば、ドクオの心は、驚愕半分、喜び半分である事は否めない。
「何?この後に及んで怖気付いた?」
相手から見れば、そう取られても仕方ないだろう。
だが恐らく、ブーンは最初からこの着地点を予定していたのだろう。
( ^ω^)「まあwwwそう取って頂いても構いませんわwww俺としては、ドクオにも花を持たせたかっただけなんだけどwww」
ブーンの言い訳とも取れる言葉に、女性冒険者はもうどうでも良いという風に鼻で笑い飛ばす。
「ふん、良いわ。そいつをぶっ飛ばして、あんたも叩きのめせば良いだけよ」
啖呵を切り、女性冒険者は受付嬢へと向き直る。
「受付嬢さん、確か此処って訓練所があったわよね?そこ貸してもらえる?ついでに武器も」
若干の険を帯びてはいるが、受付嬢相手には、女性冒険者も穏やかな口調で話しかける。
だが、先程まで凄まじい怒気を滲ませていた相手に話かけられた受付嬢は、戦々恐々といった様子だ。
「あ、は、ひゃい…あ、あちらの扉を出た先にありましゅ…」
受付嬢が案内したのは、カウンターの向かって左手、壁際にある扉だった。
「ありがとう」
女性冒険者は小さく告げ、肩越しにこちらに向くと、顎でついて来るように促す。
災難だった受付嬢に内心で謝罪しながら、ドクオは女性冒険者の後をブーンと共に着いていく。
扉を出た先は、そこそこ長い通路だった。
通路の奥が例の訓練所だろうか。
奥からは外の光が差し込んでいた。
無言のまま、二人は女性冒険者の後を追う。
気まずい雰囲気だが、ドクオは内心で高揚していた。
不可能だと思っていた、この女性冒険者との手合わせが実現し、手が武者震いで震える。
進んで行くと、通路は三つに分岐していた。
訓練所の目玉である、吹き晒しの広場に続く正面の通路、そして、訓練用の武具保管庫に繋がる左右の通路だ。
右が武器で、左が防具となっている。
「じゃあ、私は武器があれば良いから」
そう言って右側に向かう。
ーーかと思いきや、足を止める。
「分かってると思うけど、もし逃げ出したらタダじゃ済まないわよ?」
逃走するつもりなど毛頭ないが、この殺気に匹敵するような威圧感に、更に怒りが上乗せされたら、かなり大変な事になるだろう。
( ^ω^)「逃げないから安心してくだせぇwwwなwwwドクオwww」
こいつは完全に他人事だ。
彼女と手合わせ出来るのはこいつのお陰だが、それでも少しだけ悔しさを覚える。
何かやり返してやりたい気持ちが芽生える。
女性冒険者は再び武器庫の方へと歩き出す。
俺とブーンも防具庫へと向かった。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
防具庫で適当に革装備、武器庫で鉄製の片手直剣などを見繕い、訓練所の広場へと繰り出す。
相手の女性冒険者は既に、相対するように待ち構えていた。
「戦う準備は出来た?」
そういう彼女は、何やら背中に折り畳んだ何かを背負っている。
('A`)「逆に聞くが、まだ出来てないから待ってくれ、なんて言って待ってくれるのかよ?」
対するドクオは、革製のロングコートに、指抜きグローブ、ブーツと言ったいつも通りの防具に、背中には直剣ーーロングソードを装備している。
「逃げなければ待つわよ。万全の状態で叩きのめさなきゃ、意味ないから」
顔の上半分はフードの陰に隠れて見えないが、それでも感じる。
捕食者の如き威圧感。
相対してみて、改めて分かる。
目の前の相手が、類稀なる強者であると。
( ^ω^)「ドクオー!!www頑張れ頑張れファイト!!wwwイケイケ勝て勝てヴィクトリー!!www」
訓練所広場の入口でブーンが何やら騒がしいが無視する。
「それじゃあ、準備万端ってことで良いのね?」
最後の確認をするように聞いて来る。
これに、頷けば、その瞬間、戦いが始まる。
ドクオは高揚する精神を落ち着かせるように深く呼吸し、口を開く。
('A`)「ああ、始めよう」
その直後、間髪入れずに、女性冒険者は背中の武器を展開した。
それは正しくーー。
(;'A`)「弓!?」
より正確には、折り畳んでいたことから、大弓の類いだ。
女性冒険者は大弓を展開すると同時に、矢を番え、引き絞っていた。
大弓はかなりの重量と、引き絞るのにも凄まじい膂力が必要とされるが、彼女は一切、それらを感じさせない。
片膝を地面に突き、大弓を傾けて、狙いを澄まし、驚愕するドクオへと容赦無く放つ。
放たれた矢は、槍の穂先ような矢尻を有した大矢だ。
訓練用と言うだけあって木製で、尖端も刺さらないように潰されているが、それでも直撃すれば容易く怪我をするだろう。
軽装のドクオであれば尚更だ。
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