第十九章『“風の王”飛竜ヴィエンティアラ』

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かなり貫通性能が高い投擲アイテムであり、殺傷力や破壊力は低いが、岩だろうと盾だろうと竜の鱗だろうと突き刺さり、確実にダメージを与える。 難点は、先に挙げた通り、威力が低いのと、有効的な飛距離が短い事だ。 だからこそ、飛竜に飛ばれれば、例え当てられたとしても、ダメージが見込めない。 地上にいる今、使用したのだろう。 つらぬきの投擲短剣が突き刺さり、飛竜の標的がドクオへと向く。 だが、それも構わず、ドクオが二刀の長剣を携え、特攻する。 ドクオの二刀の長剣、その内、右手の白銀の長剣が、赤黒い稲妻を帯びていた。 ドクオが使用したのは恐らく、竜殺しの力ーー《竜傷力》を数分間、武器に付与する、《竜傷脂》だろう。 これも、ハインが飛竜討伐の為に支給してくれたアイテムの一つだ。 竜の血を植物性の固形脂に練り込んだものだ。 竜殺しの力を宿す剣技や闘技を使わずとも、竜種へダメージを与えることが出来る。 (#'A`)「食らえッ!!」 竜殺しの力を帯び、竜鱗による物理ダメージ半減効果を無視する剣が、飛竜の後ろ脚へと振るわれる。 剣技では無い、通常攻撃だが、左の長剣による攻撃も合わさり、連撃を叩き込む。 ドクオの左手の漆黒の長剣は、竜傷脂を用いずとも、竜殺しの力を秘めている。 ドクオの二刀の連撃は、竜鱗をものともせず、傷を刻み込む。 激しく赤黒い閃光が迸り、飛竜はドクオへと敵視を向ける。 飛竜は翼を羽ばたかせ、舞い上がると、空中で身を捻り、尻尾を叩き付ける。 ドクオはそれを二刀で受け流すように弾く。 だが、体勢を直した飛竜は、着地と同時に、風を纏う尻尾をドクオへと薙ぎ払う。 それをもドクオは風ごと弾いてやり過ごす。 そこで、飛竜へと大矢が突き立つ。 ツンが放った、竜討ちの大矢だ。 それは、飛竜の首元へと突き立つが、抜け落ちる。 竜討ちの大矢もまた、ハインの支給品であり、竜鱗をものともせず、傷を付けることが出来る。 竜の骨を元に作られた大矢であり、非常に貴重なアイテムだ。 飛竜の意識が大矢ーーひいてはツンへと向く。 更に、そこへ、風を纏ったミセリが斬り込む。 ミセ*゚ー゚)リ「はあっ!!」 ドクオと同様、二刀の短剣にそれぞれ竜傷力をエンチャントし、飛竜の後ろ脚へと舞うような連撃を見舞う。 ミセリの短剣にはそれぞれ、出血付与と風属性の効果を帯びているが、竜傷力によって、通常攻撃半減の打ち消しに加え、それらの効果も有効にする。 とは言え、出血は硬い鱗の上からは効果が薄く、属性ダメージも、魔力、魔法や属性攻撃耐性の高い竜種には効果が薄いが。 それでも、塵も積もれば何とやらだ。 少しでもダメージを与えるべく、ミセリは二刀の短剣を振るう。 そのミセリを振り払おうと、飛竜はその場で舞い上がり、勢いよく踏み付ける。 ミセリはその場から逃れ、入れ替わるように、ドクオが着地した飛竜、その頭部へと二刀による回転連撃を叩き込む。 眼前のドクオへと飛竜がその大口を開き、噛み付こうとする。 ズラリと並んだ鋭い牙の顎門に噛み付かれれば、簡単には抜け出せないだろう。 だが、それさえもドクオは二刀の長剣を巧みに扱い、弾く。 その様子を見ながら、ツーは思案する。 今、飛竜は地上に降り立ち、ドクオに狙いを付けている。 更に、ツンの射撃が飛竜の翼ーーその腕に突き立つ。 更に、ツンは飛竜へと疾駆し、竜傷力を付与した短剣で斬り掛かる。 ツンも距離を詰めつつ、遠中近を切り替えつつ攻める算段のようだ。 ミセリも問題無く、風を纏い、縦横無尽に駆け回り、隙を見て斬り込んでいる。 (*゚∀゚)「ーー今しかないッ!!」 飛竜がドクオへと踏み付け攻撃を行う。 流石のドクオもそれは弾くことは出来ず、その場から逃れる。 だが、すかさず飛竜は舞い上がり、宙返りで尻尾を振り上げ、ドクオを狙う。 それをドクオは無難に飛び退いて躱し、飛竜の尻尾が空を切る。 その瞬間、飛竜が体勢を立て直し、着地する前に、ツーは勝負に打って出る。 ツーは、空中の飛竜目掛け、何かを投擲する。 それは、無数の糸。 その糸は、飛竜の翼や脚、首や尻尾などに絡み付き、拘束する。 (#゚∀゚)「堕ちろぉッ!!」 そして、ツーがその糸を引くと同時に、飛竜は地面に叩き落とされる。 地響きと土煙と共に、飛竜の巨体が落下し、地面に叩き付けられる。 飛竜の甲高い悲鳴が響き渡る。 ツーが使用したのは、《束縛の暗糸》と呼ばれる、暗器の一種だ。 魔物の素材由来の強靭な糸で相手を拘束し、暫くの間、縛り付ける。 便利なものではあるが、使いこなすには《投擲》 に加え、《罠師》または《罠職人》の技能が必要であり、また《夢幻の暗技》によって成功率や束縛時間が変化する。 非常に扱いが難しいものだった。 これもまた、ハインの支給品だった。 落下し、地で踠く飛竜へ、三人が猛攻を加える。 ドクオは片手剣剣技の剣技連携、ミセリは二刀流剣技、ツンは短剣剣技からの闘技。 更に、それに加えーー。 ( ^ω^)「っしゃあ!wwwツーナイスッ!!www」 クロハ、ブーンが斬り掛かる。 当然、それぞれの武器には赤黒い稲妻が走っている。 クロハは曲刀剣技、ブーンは両手剣剣技をそれぞれ叩き込む。 (*゚∀゚)「おいおい、随分とお早いお着きじゃないの」 飛竜を地面に縛り付けておく為、ツーは束縛の暗糸を専用の杭に巻き付け、突き立てる。 ブーンとクロハの合流の早さは、まるでツーが拘束するより早く出て来ていたかのようだ。 ( ・∀・)「まあな。予定通りじゃなかったみたいだったからな。早めに突っ込むことにした」 ツーの横に余裕綽々と言った様子で現れたモララーはそう答えるだけ答え、自身も飛竜への追撃に向かう。 モララーが言ったのは、飛竜の奇襲のことだろう。 あれにより、当初の流れから大いに逸脱した。 とは言え、こうして挽回することは叶った。 (´・ω・`)「やれやれ、思い通りにはいかないモンだ」 当初の予定では、飛竜をこの広間へと誘き出し、空を飛ぶ飛竜を最初の四人で撃墜し、そこへ畳み掛ける形で合流する予定だった。 畳み掛けると言っても、ブーン達五人の潜伏場所はここから離れた場所であり、クロハの《千里眼》によって、拘束したのを確認してから移動を始めるのでは、予定では拘束終了と同時に合流が完了する見立てだった。 人数を制限したのは、マトモにダメージを与える前に、全滅を防ぐ為だ。 だが、飛竜の奇襲によって、その作戦は瓦解とまでは行かないが、大幅な方向転換を余儀無くされた。 飛竜がそのまま飛ばずに地上で戦ってくれたのは、思いがけない幸運と言える。 あのまま飛ばれていたら、ツーの挑発が効いたかも怪しい。 結果としては、一時的に窮地に立たされつつも、そのお陰で合流が早まり、拘束する飛竜へのダメージが予定より多く与えられ、十分に目的は達成できたと言える。 しかし、ここからは正真正銘、正面からの殴り合いとなる。 奇襲も、奇策もない。 ショボンとモナーの二人が到着すると同時に、飛竜を拘束する束縛の暗糸の巻き付いた部分が耐え切れず千切れ、解き放たれる。 攻撃していた面々が飛び退き、入れ替わるようにショボンとモナーが飛竜の前に出る。 ショボンはドクオと入れ替わる。 (´・ω・`)「ドクオ、良く耐えてくれた。一旦、こいつは任せて回復してくれ」 ショボンはドクオをチラリと見遣る。 ドクオの顔は苦痛に歪んでいる。 ショボンはクロハから、先行組が飛竜の咆哮を近距離で受けた事を聞いていた。 表面的な負傷は見受けられないが、明らかに憔悴しているのは見て取れる。 (;'A`)「あ、あぁ…悪い、頼んだ…」 そう言い残し、ドクオは一旦、後ろに下がった。
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