第十九章『“風の王”飛竜ヴィエンティアラ』

7/14
前へ
/379ページ
次へ
代わりに前に出るのは、盾にして壁役のショボンとモナー。 (#´・ω・`)「さぁ、来い!ここからは正真正銘、殴り合いだッ!!」 《挑発》を発動させ、飛竜の敵視を引く。 同時に、《挑戦者》が発動し、身体能力が向上する。 飛竜が敵視を向けたのは、ショボンだった。 拘束され、攻撃に晒された怒りを露わにして猛り、その巨体を活かして突進する。 飛竜の突進に対し、ショボンは大盾を翳し、身構える。 大盾に飛竜が激突し、凄まじい衝撃と共に、ショボンの体が押し除けられる。 だが、ショボンは大盾の面を滑らせるように受け流し、ダメージを最小限に留める。 突進を受け流された飛竜だったが、その勢いのまま、飛び上がる。 (くう)へと舞い上がり、滞空状態で振り向き、ショボンを視界に捉える。 舞い上がった飛竜の周囲で、風が渦巻く。 飛竜が咆哮を上げると、それは暴風となって吹き荒れる。 それは周囲へと拡散し、この場に居る者、全てに襲い掛かる。 盾を持つ者は防御し、持たぬ者は武器を盾代わりに防御する。 幸い、その暴風には殺傷力や破壊力は無かったが、代わりに周囲に強風が吹き荒れるようになる。 (´∀`;)「“風の領域”…とでも言うべきか…!!」 動きを阻害する訳でも無く、ダメージこそ無いものの、飛竜にとって、都合の良い環境に上書きされたのは違いないだろう。 加えて、恐らく、退路も絶たれただろう。 だがそれは、飛竜にだけ恩恵を齎す訳では無かった。 強風吹き荒れる中、滞空する飛竜へと何かがーー誰かが攻撃する。 ミセ*゚ー゚)リ「はぁあッ!!」 それはミセリ。 低空飛行とは言え、滞空する飛竜の頭部へと二刀の短剣を振るう。 顔面を斬り付けられ、煩わしそうに飛竜がミセリへと噛み付く。 だが、ミセリはそれを、舞い上がり、躱すと、反撃の二刀連撃を叩き込む。 (´・ω・`)「あの動きは…なるほど…!!どうやら、飛竜の独壇場という訳では無いらしい…!!」 どう言う訳か、この風の領域内では、ミセリの風の精霊使役もまた、強化されるようだ。 ショボンはモナーと視線を交わし、頷く。 滞空状態の飛竜には、ミセリが対応出来る。 それならば、自分達はミセリの援護に回るべきだろう。 ミセリの連撃が終わり、ミセリは地上へと落下し、着地する。 どうやら、ずっと滞空し続ける事は出来ないようだ。 だが、それでも充分だ。 活路は見えた。 着地したミセリへと飛竜が滞空状態で襲い掛かる。 鋭い刃物のような爪を備えた双脚による掴み。 ミセリと飛竜の間に、モナーが割り込み、その爪を弾く。 直後、飛竜の頭部に大矢が衝突する。 突き刺さってはいないが、ダメージが入ったのは間違いない。 そして、立て続けに、風を纏うツンが疾風の如く駆け抜け、滞空する飛竜の尻尾を足場に駆け上がり、跳躍すると、その無防備な背中に連続射撃を見舞う。 ミセリ同様、ツンの固有技能ーー風読みもまた、この空間では能力が上昇しているようだ。 ξ*゚⊿゚)ξ「あはっ!何これ!スゴい!私が私じゃないみたい!!」 嬉々とした表情でツンは着地し、立て続けに地上から機敏な動きで大矢を連射する。 そこへ飛竜が反撃を見舞うが、ショボンが壁となり、立ち塞がる。 大盾で尻尾を受けつつ、面で受け流す。 (#´・ω・`)「良しッ!滞空中の飛竜への攻撃はミセリとツンに任せる!俺たちは援護だッ!!」 指示を出し、盤面を整えて行く。 その間にも、ミセリとツンは身軽な機動で舞い上がり、滞空する飛竜の頭部、或いは背中へと攻撃を見舞う。 モナーとショボンは、壁として、二人の着地時のカバーに回る。 攻撃の届かないクロハとブーンは、割り切って、攻撃出来るタイミングに備え、待機する。 ( ・∀・)「ちょいと試してみるか」 モララーは両手剣を風の飛竜へと向ける。 飛竜の周囲では、風の領域によって機敏になったミセリとツンが、飛び上がり、攻撃し、着地し、回避して、という工程を繰り返している。 時に、着地時に飛竜の攻撃がかち合った際には、壁のショボンやモナーが盾となって割り込む。 飛竜の攻撃は、風を纏った事で、範囲を広げている。 恐らく、攻撃力も増していることだろう。 それらを回避、或いは、庇ってもらうミセリとツン、その二人がタイミングよく同時に着地する瞬間に、モララーは練り上げていた魔術を放つ。 ( ・∀・)「“魔法殺し”の魔物ーー竜。その力を見せてみろッ!!」 モララーの両手剣、そこに嵌められた宝石が真紅に輝く。 放たれたのは、紅蓮の珠玉。 火属性の上位魔術、その一つ、《ブレイズ・スフィア》。 太陽のような、炎の塊だった。 それは真っ直ぐ、対空する飛竜へと飛んで行き、直撃する。 球状に爆発が起き、飛竜を爆炎が飲み込む。 その直後、一際強い風が吹き荒れ、炎の残滓と黒煙を吹き飛ばす。 爆煙が晴れた先に舞うのは、先程よりも密に風を纏う飛竜の姿。 その様は、まるで“風の鎧”だ。 飛竜は一際強く羽ばたくと、飛び退くように移動し、地面に着地する。 如何に飛竜と言えど、その巨体を常に浮かせ続けるには、相応にエネルギーを消費するのだろう。 着地した飛竜は、暴風の鎧を纏ったまま、突進する。 巨体に加え、大口を開いてあわよくば噛み付こうとする飛竜に対し、その進行上に位置していたショボン達は、回避を選択する。 無人の空間を突っ切る飛竜だが、すぐさま反転し、回避したショボン達ーーその中でも、ミセリへと執念深く付き纏う。 (#´・ω・`)「ミセリ!こっちに!!」 ショボンが自分の元へと誘導するように指示を出し、ミセリは頷く。 二度目の突進を風の鎧に触れないギリギリの位置で避ける。 先程と同じように飛竜は身を翻し、ミセリを追う。 飛竜の突進、その気配を背中で感じながら、ミセリは真っ直ぐ、ショボンへと疾駆する。 ショボンは大盾を持ったまま、飛竜を待ち構える。 直前でミセリはショボンを飛び越えるように跳躍し、ショボンの背後で着地する。 ミセリはそのまま真っ直ぐ走り抜け、防御体勢のショボンへと飛竜の突進が迫る。 (#´・ω・`)「お前はーー俺にだけ攻撃しやがれッ!!」 重ねるように挑発し、飛竜の気を引く。 ショボンは《挑戦者》の効果で、挑発を使用し、敵視を受け持った事で身体能力が向上している。 更には、先の飛竜の風纏いーー風の鎧も形態変化に含まれる為か、その分でも防御性能が向上している。 飛竜が鋭い歯牙が並んだ口を開き、ショボンへと勢いのまま突進する。 ショボンはそれを大盾の面で受け流す。 飛竜の顎門(あぎと)だけでなく、突進の衝撃をも受け流し、ショボンは飛竜の股下を潜り抜ける。 そして、動きの止まった飛竜へと、タイミングを窺っていたブーンとクロハの二人が斬り掛かる。 クロハは慣れたように練り上げた練気を大刀に流し、気刃を為す。 気刃を振り被り、クロハは飛竜へと剣技を見舞った。   ⊿√⊿ ノノル#゚ -゚)リ「はぁあッ!!」 裂帛の気合いと共に放つは、剣技ーーフルムーン・ブラスト。 竜傷力エンチャントによって、赤黒い稲妻が走る刃が、重い三連撃を叩き込む。 続けて、ブーンも飛竜へと大剣を振るう。 クロハと同じく、練気術を体得しているブーンだが、まだ術式は扱えない。 だが、練気術の呼吸を意識し、体内の気を意識する。 それにより、スタミナの消耗を抑え、僅かに攻撃のキレも増す。 それに、ブーンには、取っておきの《飛翔剣》 の力がある。 《ソニック・スラッシュ》を発動し、剣技を叩き込む。 ( ^ω^)「どっせぇぇぇぇぇぇええええええええええええいッ!!!www」 ブーンの大剣が豪と唸り、飛竜へと襲い掛かる。 剣技ーーイラプション。 噴火を思わせるような大迫力の斬り上げ。 斬り上げの斬撃から一拍置いて、飛翔剣による衝撃波が炸裂する。
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加