第十九章『“風の王”飛竜ヴィエンティアラ』

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ガードカウンターで発動させる剣技は、発動時のーー予備動作を僅かに短縮し、通常の剣技よりも短い時間で剣技を放つことが出来る。 通常では予備動作が長く、隙が大きい剣技も、ガードカウンターと併用する事で、隙を小さくすることが出来る。 ショボンが繰り出したのは、八連撃技ーーオーソゴナル・スクウェア。 深紅に煌めく無数の剣閃、その軌跡が、交わり、重なり、風の鎧を斬り刻む。 そして遂に、飛竜が纏う風の鎧が四散し、飛竜自身も大きく仰け反り、地面へと倒れ込む。 ( ^ω^)「風が…!」 ( ・∀・)「破れた!!」 ここに来て、ツーの拘束に続く、二度目の攻撃チャンス。 これを逃す理由は無い。 全員が一斉に畳み掛ける。 (#'A`)「おぉッ!!」 ドクオは、右手の白銀の長剣ーープラチナム・ブレードに赤黒い稲妻を付与する。 ドクオが使用したのは、《滅龍ヤスリ》と呼ばれる、を付与するアイテムだ。 竜種が相手の場合、竜傷力よりも龍属性の方が効果が高い。 だが、難点は《脂系》のアイテムよりも効果時間が短い事にある。 だからこそ、こう言った明確な隙でない限り、使用する場面が限られる。 竜傷力を有する左手の漆黒の長剣ーーソード・オブ・ダスクと併せ、迅速剣により強化された剣技連携を繰り出す。 右の長剣による単発の垂直斬り、バーチカル。 そこから、左の長剣による二連撃の水平斬り、ホリゾンタル・デュアル。 更に剣技は加速し、三連撃のビーストクローへと繋げ、垂直四連撃、バーチカル・クォーターを叩き込む。 そこから、右手の長剣を引き絞り、突進の勢いを乗せ、剣尖を撃ち込む。 メテオライト・インパクトは、単発でありながら、多段攻撃であり、三回の追撃が発生する。 竜傷力の赤みの強い閃光と、龍属性の黒みの強い雷光が炸裂する。 計十三回の直撃により、飛竜の鱗が削られ、飛び散る。   ⊿√⊿ ノノル ゚ -゚)リ「はぁあッ!!」 クロハもドクオ同様、滅龍ヤスリによって大刀に龍属性を付与し、飛竜へと剣技を見舞う。 曲刀奥義、エクスキューショナー。 計八連撃にも渡る鋭くも重厚な連撃が、飛竜の鱗を斬り裂いて行く。 ( ・∀・)「らあッ!!」 モララーの両手剣は、魔法の媒体にもなると言う特殊な武器故に、属性の付与が出来ない。 竜種の竜鱗を打ち消した上で特効効果によって大ダメージとなる龍属性を付与する滅龍ヤスリの使用は出来ないが、竜鱗の効果を打ち消すだけの竜傷力の付与は可能だ。 竜傷脂によって、赤黒い稲妻を纏った両手剣で、剣技を繰り出す。 五連撃技、ブレイズブレイド。 爆炎が燃え盛り、舞い踊るような熾烈な連撃が、飛竜の鱗を叩き斬る。 ( ^ω^)「っしゃあ!一気に行くぜぇッ!!」 ブーンも自身の大剣ーーグレートソードに龍属性を付与し、渾身の剣技を叩き込む。 二連撃技、ドラゴンバイト。 飛翔剣も併せた、多重斬撃が、豪快に飛竜を喰らう。 ドラゴンバイトは、竜傷力を有する。 龍属性と竜傷力が重なった場合、より強い方の力が優先される。 今回の場合は、付与した龍属性が優先される。 二連撃の斬撃、追撃の二段の衝撃波の計六回の直撃により、飛竜の甲殻が欠ける。 (´∀`#)「食らえッ!!」 モナーの武器もまた、属性付与が不能。 だが、それに裏打ちされた余りある絶大な破壊力を持つ。 モナーは大斧の撃鉄を起こし、備わった炉に火を付け、重厚な刃を赤熱させる。 赤熱した刃は、飛竜に直撃すると同時に爆発を起こし、その衝撃が内部へと伝わる。 炎による燃焼ダメージは効果が薄いと思われるが、この大斧の真骨頂は重厚な刃による攻撃の重さと、爆発の衝撃を合わせた破壊力にある。 勢い良く振り下ろした大斧を今度は、振り上げる。 攻撃の軌跡を爆炎が舞い、火の粉が飛び散る。 その凄まじい破壊力により、飛竜の甲殻に亀裂が走る。 瞬間火力に優れる五人の猛攻により、飛竜は各所の鱗が剥げ、また甲殻も欠けていた。 更に、ツーの短剣による連撃が確かなダメージと麻痺の状態異常を蓄積し、ツンの短剣と体術を併せた連撃、ミセリの二刀の短剣の連撃が着実に飛竜にダメージを刻み込み、ショボンが飛竜の眼球に長剣を突き立て、致命の一撃を見舞う。 明確に、ダメージの蓄積が感じられたショボンたちだったが、飛竜もずっと倒れているはずも無く、起き上がり、立ち上がる。 ショボン達は一度、飛竜から距離を取り、様子を窺う。 ショボンに潰された左眼から血を流しつつも、残る右眼で睨み付け、怒りを露わにして唸る。 飛竜は大きく翼を広げ、胸を反らすと、前のめりに大口を開き、今までに無い、重厚な重低音の咆哮を放つ。 それは、ほんの一瞬の爆音だったが、その凄まじい音圧に、ショボン達は怯む。 そして、飛竜の口からは、火の粉が漏れていた。 それを見逃さなかったショボンは、大盾を構えて叫ぶ。 (#´・ω・`)「全員、奴のブレスに警戒ッ!!」 飛竜は大きく息を吸い、ショボンに向かって、口を開く。 吐き出されたのは、火の玉にして、火球。 それも、一度に留まらず、二回、三回、と左右に火球を放つ。 火球ブレスは、着弾と同時に派手に爆発し、周囲の地面を炎上させる。 (#´・ω・`)「風だけに留まらず、火まで使うのか…!!」 ブレスを終えた飛竜に、ツーが接近する。 (*゚∀゚)「これはどうだッ!!」 ツーの短剣が閃き、剥げた鱗の部分を切り裂く。 ツーに続き、風を纏ったミセリが飛竜へと肉薄し、軽々と跳躍し、同時に全身を独楽のように回転させ、二刀の短剣で翼を斬り付ける。 ξ ゚⊿゚)ξ「二人ともあんまり踏み込むんじゃないわよッ!!」 ツンは大弓を引き、大矢を放つ。 ツンが放った大矢ーー竜討ちの大矢は、飛竜の欠けた甲殻部分に撃ち込まれる。 仲間たちが更に畳み掛けるよりも先に、飛竜が動く。 大きく翼を広げ、胸を反らす。 まるで、先程の咆哮のような予備動作だが、僅かに違和感を覚えた。 ツーとミセリはすぐさま離れると、その直撃、飛竜は地面に火球を吐き、後方に飛び退き、低空飛行で滞空状態となる。 (;'A`)「あの動きは…!」 その動きに、ドクオは見覚えがあった。 成り損ないの黒竜も見せた、飛び退き火球ーーバックジャンプブレス。 ドクオは、ここからが飛竜との本当の戦いであると、確信した。 滞空状態になった飛竜は、空中で錐揉み回転をしながら突進する。 その狙いは、攻撃のタイミングを窺っていたツン。 ξ ゚⊿゚)ξ「チッ」 舌打ちしながらも、錐揉み回転突進の軌道上から逃れるように、滑るように回避する。 そして、空中で体勢を戻した飛竜は、自身の真下の地面に火炎を吐く。 だが、それは火球ではなく、長く持続し、火炎を吐いたまま、上体を反らす。 その動きに応じて、地面に吐き出された火炎は、直線上に延び、その延長線上のツンを飲み込もうとする。 (´∀`#)「させるかッ!!」 咄嗟に、近くにいたモナーが大盾を構え、ツンを庇う。 火炎はモナーの大盾で阻まれ、拡散し、ツンは事なきを得る。 ξ ゚⊿゚)ξ「ありがとう、モナー。助かったわ」 (´∀`)「ツンが無事で良かった」 安堵する二人に対し、飛竜は火炎の反動からか、地面に着地する。 そこを狙ったように、ドクオが駆ける。 着地した飛竜の頭部へと、二刀の長剣による連撃を叩き込む。 白銀の長剣には竜傷脂が塗られており、竜鱗をものともせず、叩き斬る。 だが、ドクオが持つ竜傷脂の残数も着実に減りつつある。 竜傷脂の一度に持ち込める数は五つ。 その内の二つを今、消費した状態で、残るは三つ。 滅龍ヤスリも同様五つであり、一つ使用で残り四つ。 残りは、竜傷脂よりも効果時間は長いが、効果そのものが薄い、《赤黒松脂》が三つと、それの龍属性バージョンの《滅龍砥石》が一つ。 砥石は何度でも使用できるが、一度使用すると長時間のインターバルを挟まないと再使用出来ない。 他のメンバーも似たようなものだろう。 これらのアイテムを使い切る前に、果たして飛竜を倒し切れるのか。 僅かな不安がドクオの脳裏を過ぎる。
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