第十九章『“風の王”飛竜ヴィエンティアラ』

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(#´・ω・`)「フン…俺の盾をこんな風にしてくれたツケはデカいぜ」 恐らく、飛竜の熱線を受けたのだろう。 飛竜の正面に立っていたショボン自身が無事なのは、大盾を犠牲にしたお陰なのだろう。 溶けて歪んだ大盾では、以前のような防御性能は期待出来ない。 だからこそ、最早あの鉄塊は、いざという時の障壁か、打撃武器にしかなり得ない。 ( ・∀・)「ショボン…お前、盾が…」 モララーの隣に立ったショボンに、それとなく声を掛ける。 (´・ω・`)「あ?まあしょうがねぇさ。装備を大事にして俺が死んだら意味ないからな。必要な代償だ」 そう言うとショボンは、歪み飛竜の歯形が付いた鉄塊を背中に背負い、両手で長剣を握る。 (´・ω・`)「次の盾はもっと耐性にも気を配らねぇとな。物理防御だけに拘った弊害だ」 「はーやれやれ」と言った風にショボンは溜め息を吐く。 そこへ、立ち直った飛竜が突進する。 ショボンとモララーは左右に分かれ、突進の軌道上から逃れる。 ( ・∀・)「ショボン!俺に策がある!それまでどうにか持ち堪えるぞ!!」 指輪へと意識を向ける。 魔力充填量180%。 放つ光は、最早、深紅を超え、黒に近いダーククリムゾンに染まっている。 (´・ω・`)「耐久か。盾は無いが、まあどうにかなるだろ」 二人の横を通り過ぎた飛竜は、背を向けたまま、短くなった尻尾をショボンへと振るう。 短くなっているのもあって、ショボンはバックステップのみで簡単に回避する。 だが、飛竜は尻尾振り回しを起点に向き直り、今度はモララーへと噛み付く。 (;・∀・)「さっきからワンパターンだぜッ!?」 そう言うモララーだが、その表情に余裕は無い。 慣れない魔力充填に、相手は油断出来ない飛竜と言うのもあって、モララーの精神と集中力を順調に削っていた。 飛竜の噛み付きを転がって回避し、すかさず両手剣を振るい、飛竜の顎を打つ。 剣技を使うような余裕はない。 それに続いてショボンが側面から両手持ちの長剣による回転斬りを見舞う。 対して飛竜は、両翼を地面に突き、身を捻ると弾かれたようにその場で回転する。 今までに無い攻撃に、ショボンとモララーは判断が遅れ、被弾する。 二人は勢い良く吹き飛ばされ、地面を転がる。 (メ;´゚ω゚`)「ッ…くっそ!!」 そして、飛竜が標的に定めたのは、モララー。 飛竜もモララーの魔力に気付いているのだろう。 充填量は190%。 あと少しだと言うのに。 飛竜が大地を揺らし、モララーへと突進する。 このままその顔面に叩き付けるか? そんな考えが過った直後。 突進する飛竜へと無数の矢と風の刃が襲い掛かる。 ξメ゚⊿゚)ξ「なんか知んないけど、露払いは任せなさいッ!!」 ミセ*゚ー゚)リ「遅れてごめん!ここからはわたし達もサポートするよっ!」 ツンとミセリの援護によって、飛竜の意識が逸れる。 続けて。   ⊿√⊿ ノノル ゚ -゚)リ「私たちも居るぞッ!!」 意識が逸れ、突進を辞めた飛竜へと獣化したクロハが、気刃の大刀を振るう。 (メ^ω^)「何か分からんが食らえッ!!www」 疾走の勢いを乗せた渾身の回転斬りを飛竜へと見舞い、その巨体を揺るがす。 だが、飛竜は更に怒りを燃え滾らせるように、大気を震わせる咆哮を放ち。 周囲のブーン達を吹き飛ばす。 だが、モララーに影響は無かった。 (´∀`;)「取り敢えず、何かあるんだろ!?モララー!!壁役は俺に任せろ!」 咆哮は、大盾を構えるモナーが遮っていた。 怒りのお陰か、飛竜の口元から再び火の粉が漏れ出る。 唯一無事なモナーとモララーへと、飛竜は火球を放つ。 モナーは身を挺して大盾で防ぎ、モララーを守るつもりだ。 だが、火球がモナーの大盾に触れるより早く、横から割り込んだ投擲物により、直前で爆ぜる。 (*゚∀゚)「ふぅ…どうにかなって良かった!!」 ツーが投擲した鉄球が火球に触れて爆発したようだった。 そして、それと同時に、モララーの左手の指輪に、200%の魔力が充填された。 (メ・∀・)「ーーよしッ!みんな!イケるぜッ!!」 モララーは、飛竜に向かって、指輪を嵌めた左手を前に翳した。 だが、今の飛竜に大規模な魔法を当てられるような隙は無い。 モララーは緊張した面持ちで飛竜を見据え、モナーの後ろから狙いを定める。 「隙を作れば良いんだな?」 ふと、背後からそんな声が聞こえた。 その直後、無数の投擲短剣が飛竜へと殺到する。 それは、竜鱗の上から飛竜の肉体へと突き立つ。 つらぬきの投擲短剣。 (#'A`)「まだだッ!!」 更にドクオは、腰から二本目の竜撃槍を取り出し、飛竜へと放る。 しかし、飛竜も先程、竜撃槍を受けて危険性を理解したのだろう。 すぐさま翼を広げ、斜めに飛び上がる。 (;'A`)「やべっ…!」 ドクオの放った竜撃槍は、飛び上がった飛竜の下を通過する。 ーーその瞬間、不可視の風の刃が竜撃槍に触れ、跳ね上げる。 (;'A`)「!!」 跳弾した竜撃槍は飛竜へと向かい、その脚部に突き立つ。 ミセ;゚ー゚)リ「これでどうにかなる!?」 しかし、勢いが殺がれ、衝撃が弱い為か、竜撃槍は爆発しない。 そこへ、突如として飛来した大矢が竜撃槍を押し込む。 ξメ゚⊿゚)ξ「全く、ちゃんと決めなさいよね」 大矢によるダメ押しの衝撃が引き金となり、竜撃槍は赤黒い爆炎を迸らせる。 爆発の衝撃、竜傷力により、飛竜は悲鳴を上げて地面に墜落する。 (#・∀・)「お前らーーありがとう!!」 そして、モララーは墜落した飛竜へと、満を持して、溜めに溜めた魔法ーー火の魔術を放つ。 (#・∀・)「食らえ。出力最大、200%ーー《ブレイズ・スフィア》!!!」 放たれたのは、炎では無く、黒い塊。 それは、よく見れば赤く燻っており、粉塵のようなものの集合体だった。 軌跡に燻る粉塵を残し、黒い塊は飛竜へと駆ける。 だが、飛竜も最後の抵抗を見せる。 狙いも定めずに、口から炎を噴き出す。 揺らめく炎が舞い上がり、黒い塊にその火の粉が触れる。 その瞬間、黒い粉塵の塊は赤く赤熱して眩く輝き、弾け、爆ぜる。 赤を通り越して青白い爆炎が球状に広がって飛竜を飲み込み、遅れて爆音が轟き、爆風が広がり、大地を揺るがし、大気を震わせる。 燃焼や炎上による熱ダメージは考慮せず、ただ一瞬の爆発の破壊力と衝撃に重きを置いた、言わば《爆破魔術》。 瞬間的に超高温を発生させるが、発生する炎も何もかもを爆発によって吹き飛ばす。 後には、僅かに燻る地面と立ち昇る黒煙、大きく抉られたクレーターだけが残る。 だが、その中で、飛竜は黒煙を纏いながらも、確実に生を繋いでいた。 爆発により、殆んどの鱗や甲殻が割れ、砕け、剥げ、角や爪なども折れている。 それでも尚、飛竜は息を荒げ、血を滴らせながらも、その瞳に怒気を宿し、モララー達を睨め付けていた。 しかし、それもモララーにとっては想定内だ。 追い詰める事は出来るだろうが、元より倒し切れるとは思っていない。 だからこそ、モララーは念には念を入れていた。 両手剣に、左手の指輪に残った爆破魔術の残滓ーーその燻る魔力を付与する。 両手剣の刀身は燻る黒い粉塵に覆われる。 言わば、《爆破属性》の付与と言える。 モララーは、爆破属性を付与した両手剣を握り、飛竜の動きを窺う。 モララーの視線の先で飛竜はーー両翼を地面に突き、怒りを滾らせ、空に向かって咆哮する。 その直後、再び暴風が巻き起こる。 吹き荒れる暴風の中、モララー達は、どうにか倒れずにいる事がやっとの状態だった。 飛竜は尚も天に向かって咆哮を続けている。 そんな中、ふと違和感を覚えた人物がいた。 飛竜が仰ぐ空には、暗雲が立ち込めていた。
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