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午後六時、普段なら部活終わりの生徒たちでにぎわう校門も、終業式を休み明けに控えた今日は静まり返っている。生徒たちは帰宅しても、教師たちは後片付けやの終業式の準備などをしていれば帰宅時間はいつもと変わりない。
こういうときに、まだ家にすら帰れていない自分を呪う。これから家に帰って、必要最低限の身の回りの物と喪服を持って新幹線に飛び乗らなければならない。仙台行きの新幹線の最終は何時だろうか。
何事も、小夜が帰らなければ進まない。久理子の成人した身内は小夜だけだ。
『死亡届のサインだけは身内じゃないといけないからな。小夜ちゃんと久理子さんの関係を証明する戸籍謄本は親父さんの分も含めて、久理子さんから生前にもらってるから』
両親が離婚していても、久理子が小夜の祖母であることに違いはない。両親が離婚したのは小夜が中学の時と十五年以上前だ。久理子の近所で、小夜のことを覚えている人はどれだけいるかわからない。
戸籍謄本は人が亡くなると現れる、自称・親戚だと近所の人たちに誤解されないための苦肉の策だ。
『織衣ちゃんに署名してもらうのも、ちょっとな』
誤解されかねない理由の一つが、それだ。
織衣は父・茂が再婚して生まれた子だ。小夜の腹違いの妹にあたる。十五歳、中学を卒業したばかりの織衣はこの十年ほど、久理子と二人で暮らしてきた。名字はもちろん、久理子と同じ佐久間だ。だから久理子の孫というと織衣を思い浮かべる人が多いだろう。
そこにいくら父親が同じであるとはいえ、小夜が顔を出せば誰かと思われる。
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