恋する卵焼き

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 卵焼きはそれぞれちょっと焦げたところもあるが、ラップで成形したこともあり綺麗な形をしている。玉ねぎがやや大きめのハンバーグは各自で成形して不格好ながら、美味しそうな匂いが漂う。ピーマンのツナ和えはピーマンとツナ缶に火を通し、醤油を使っただけの簡単レシピだ。だがピーマンがあまり好きではないのか、二人の反応は薄い。温野菜サラダとみそ汁は野菜の厚みがまちまちだったりするが、きちんとできたということに二人とも満足そうな顔をしている。  盛り付けもすべて自分たちでやり、テーブルに着くころには十二時を回っている。昼食にはいい時間だろう。  織衣たちが料理を前に手を合わせるのを見ながら、小夜は後片付けに回る。調理実習なら片付けるのも自分たちでやらなければならないが、今日は簡単な料理の作り方を覚えてもらうのがメインだ。  ――それに若い二人の邪魔をしたくないしね。 「卵焼き、ウマい」 「私の、なんかべちょっとしてる」  織衣が恨みがましい視線を小夜に向ける。 「火が通る前に巻いたからね」  唇を尖らせながら、織衣は自分が作った卵焼きを口に運ぶ。初めて作った卵焼きは、満足のいくできではなかったようだ。もしかすると磯川に、おいしい卵焼きを作れるところを見せたかったのかもしれない。 「一切れ交換しない?」  磯川が提案し、二人はそれぞれの卵焼きを交換して口に運ぶ。 「ちょっと焦げてるんだけど、普通においしい」 「……新食感の卵焼き。これ、いざとなったらスクランブルエッグにすればよくね?」  織衣の卵焼きを新食感と表現し、織衣に睨まれた磯川が慌ててフォローする。 「そうだね。トーストにベーコンやウインナーを添えて、野菜サラダで朝食にいいよね」 「それなら卵に牛乳もっと入れてもウマそうですよね」 「卵と牛乳は仲良しだからね」
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