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そんな凪にトラブルを持ち込んだ母は、息子の答えを興味深そうに待っていた。
ここで僕が名前を付けたら、母と共犯になってしまう。
だからと言って返してこいなどとは、言えない。おそらく母の口ぶりからして、子どもたちはもう戻るところなどないのだろう。
そこまで凪が分かるということを、計算されていることがくやしい。
凪はきょとんとしている双子を見やって、ぼそりと言った。
「男の子がヒロト。女の子がアオ」
母は目を丸くした。
「よくこっちが女の子って分かったねぇ」
二人とも髪は同じくらいの短髪で、よく似ていた。確かにぱっと見、二人とも男の子に見えるかもしれない……だけど。
「見りゃ分かるよ」
女の子の方は、同じ造作でも優しい顔立ちに見えた。
「へえ、よく見てるね」
母の言葉に、凪は舌打ちしたい気分になった。
「で、なんでヒロトとアオ?」
「クラスで嫌いな奴の名前」
母は再び目を丸くし、声を上げて笑い出した。
息子には大声を出すなと言っておいて、なんなんだ。
「なんで笑ってるんだよ」
「いや……」
クックッと母は肩を震わせて笑っている。
「漢字は?」
「ああ、ええっと。ヒロトは大きいに飛翔の翔。あとアオはブルーって意味の下が石の……」
凪が答えているのに、母の笑いは一向に収まらない。
「なんだよ」
遂に不貞腐れて、凪が黙ると、母は驚くほど優しい目で凪を見ていた。
「だって、嫌いな奴の名前なのに、下の名前の漢字まで覚えているってすごいなと思って」
「ッ」
その時、凪の部屋のドアが開いた。
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