落下星  理想的な家族11ー凪

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   そんな凪にトラブルを持ち込んだ母は、息子の答えを興味深そうに待っていた。  ここで僕が名前を付けたら、母と共犯になってしまう。  だからと言って返してこいなどとは、言えない。おそらく母の口ぶりからして、子どもたちはもう戻るところなどないのだろう。  そこまで凪が分かるということを、計算されていることがくやしい。  凪はきょとんとしている双子を見やって、ぼそりと言った。 「男の子がヒロト。女の子がアオ」  母は目を丸くした。 「よくこっちが女の子って分かったねぇ」  二人とも髪は同じくらいの短髪で、よく似ていた。確かにぱっと見、二人とも男の子に見えるかもしれない……だけど。 「見りゃ分かるよ」  女の子の方は、同じ造作でも優しい顔立ちに見えた。 「へえ、よく見てるね」  母の言葉に、凪は舌打ちしたい気分になった。 「で、なんでヒロトとアオ?」 「クラスで嫌いな奴の名前」  母は再び目を丸くし、声を上げて笑い出した。  息子には大声を出すなと言っておいて、なんなんだ。 「なんで笑ってるんだよ」 「いや……」  クックッと母は肩を震わせて笑っている。 「漢字は?」 「ああ、ええっと。ヒロトは大きいに飛翔の翔。あとアオはブルーって意味の下が石の……」  凪が答えているのに、母の笑いは一向に収まらない。 「なんだよ」  遂に不貞腐れて、凪が黙ると、母は驚くほど優しい目で凪を見ていた。 「だって、嫌いな奴の名前なのに、下の名前の漢字まで覚えているってすごいなと思って」 「ッ」  その時、凪の部屋のドアが開いた。
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