落花生

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そして、学部の友達と夏祭りに行くことになり、私と理佐は張り切って浴衣を着た。 「和歌、帯はこれで合ってる?」 「合ってるんだけど、もう少しきつく締めたほうがいいかも」 自分1人で着たことがないと嘆く理佐に、私は着付けを教えていた。 「和歌がいて本当に良かった。この前もね、教えてくれた淹れ方でお茶を淹れたら、美味しいって彼氏に絶賛されちゃった」 「理佐の彼氏…確かフランスの留学生だっけ。役に立てて良かったよ」 「ほんと、和歌は何でも知っていて尊敬しちゃう」 「たまたま茶道部だっただけだよ」 運動ができない私は、何となく茶道部を選んだのだが、最近になって当時のスキルが活かされていると感じる。 外国人から来た人たちは「日本人らしさ」を好み、日本文化や和食について知りたがる人が多い。 今日も、浴衣を着ることになったのは留学生からのリクエストがきっかけだった。 自分1人で着付けができるのも、美味しいお茶を淹れられるのも、あの頃にたくさん学んだおかげだと思っている。 楽しい経験を深く味わい、辛い経験を素早く消化するのに役立つものは、やはり教養なのだ。
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