【前編】

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 ***  小学校の低学年までは、特に困るようなことは何もなかったように思う。四年生からミニバスのチームに入って、それからぐんぐん背が伸びて。お父さんもお母さんも背が高い人だったから、きっと遺伝だろうな、なんてことを思ったりもした。そこまでは良かった。背が大きいだけなら女性だって珍しくないし、スポーツにおいては女の子だって長身であればあるほど有利になる。バスケットボールなら尚更だ。  でも、五年生あたりで声変わりが来た。実の所女の子だって声変わりはある。ただ、男の子よりも目立たないことが少ないというだけだ。――いつの間にか、声がものすごく低くなっていた。同年代の女子達と比べれば一目瞭然。声だけ聴いたらきっと、私が女子だなんて誰も思わないことだろう。  その上、背はぐんぐん伸びる。身長は、十五歳の今175cmもある。流石にこれ以上伸びるのは嫌で、高校では運動部に入るのはやめようと正直思っていた。きっとあちこちから勧誘は来るだろうけれど、高校の運動部は中学同様男女で別れているものである。間違いなく女の子なのに、“本当に女子?”と疑われるような眼で見られるのはごめん被りたい。それこそ、今のご時世はLGBTQの問題もある。一部の人が、“性転換した女子”なんかにものすごく敏感かつ攻撃的になっていることを知っているのだ。私は、そういうわけではないというのに。 ――せめて、もうちょっと女の子らしい体型だったら良かったのかな。  幸い、顔立ちはそこまで男っぽいわけでもない。女子の制服を着て歩いていれば、かろうじて女の子には見えるだろう。ただし、体型は結構骨ばっているし、胸も非常に小さい。スカートでない格好をして歩いていると、男子にしか見られないことも珍しくないのだった。せめてもの抵抗で髪を伸ばしてみてもあまり意味がなかったので(長髪の男と思われるだけだった)、今はもう手入れも面倒なのでボブカットにしてしまっている。  高校になったら、女の子でも体が大きい子は増えるはず。男子ならもっと長身で、自分より屈強な体格の子なんて珍しくもなんともなくなるはずだと思っていた。――残念ながら、その夢はあっけなく砕け散ったけど。 ――高校一年生の男の子って、意外に小さい子多いんだな。て、私がデカすぎるだけか。
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