18

3/6
前へ
/130ページ
次へ
「……鏡花さんーーーー… ーーーー…悠貴さんはーーーー …鏡花さんにツバメのようになってほしくは無くてーーー…最後のワガママでーーー ーーー鏡花さんに電話をかけたんだと思います」 私は鏡花さんの表情を伺いながら告げた。 私は溺れそうな感覚で息を吸い、言葉を続ける。 呼吸が苦しいーーーー。 酸素がーーー吸っても吸っても入ってこないようなーーーそんな感覚がしてくるーー。 「鏡花さんにーーー今死のうとしている自分に気づいて欲しいとかーーー止めて欲しいとかーーー そんな事は思ってなかったと思いますーーー」 鏡花さんは無表情で私を黙って見つめていた。 なんと思っているのだろう。 塔野さんは生きているから、私には鏡花さんの気持ちは分からない。 でも鏡花さんがーーーどれくらいその男性ーーー悠貴さんの事が好きだったかはーーー私にも分かる気がするーーーー。 私も同じように塔野さんをとしたら、鏡花さんのようになっていたんじゃないかとさえ思う。 「ーーー悠貴さんはーーーー… 鏡花さんにーーー 悠貴さんが思い描いた通りのツバメになって欲しかったんだと思いますーーー… 自分の事は忘れないでーーー覚えていて欲しいけどーーー自分に縛られる事なく幸せになってほしいーーーー ーーーーきっとそう思った筈でーーーーーー」 「黙んなさいよ」 鏡花さんの声がすると同時に、私は体を反らせ悲鳴をあげた。 注射針が鎖骨の部分に容赦なく突き刺され、骨の神経の奥から響く痛み。 頭てっぺんから、腰の神経までーーービリビリと感じる痛みーーーー 鏡花さんは無表情で、私を押さえつけたまま注射針で何度も突き刺す。 耐えきれず私は泣き叫び、暴れ、鏡花さんの腕からすり抜けて床に倒れ込んだ。 痛みへの恐怖で身体中が震える。 「ーーーえらそうに…… ーー貴女が悠貴の何を知ってるのーーーー?」 「…ッ……鏡花さ…………」 鏡花さんは倒れ込んだ私を上から押さえつけ、私に馬乗りになった。 髪を片手で掴まれたかと思うと、床に容赦なく打ち付けられた。 「ーーーーーーッ!!! …鏡花さ……やめッーーーやめてーーー!」 「黙ってよーーー…黙れ…黙れ黙れ!!! 何にも知らないくせにーーー…分かったような事言うなッ!!!」 「ーーーーーーッ!!!」 視界が揺れて、一瞬吐き気がする。 自分の後頭部に感じる、生温かい感触ーーー私ーーーー出血しているーーーー。 「ーーーー約束したんだからーーー! ーーーずっと一緒にーーー ーーーー私の前からーーーいなくならないでーーーーーってーーー!」 鏡花さんは叫びながら、なおも私の頭を叩きつける。 私は両手で頭をなんとか覆い、身を守る。 その行為は何度と続き、鏡花さんは力尽きたように突然私の髪を離した。 そして私は気づいた。 鏡花さんがーーー泣いてる事ーーーー。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

449人が本棚に入れています
本棚に追加