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「お話を途中でさえぎらないでください。サコタ師は大切なことを言っておられますから、きちんと最後まで聴いてから発言してください」 「だから何も聞こえないだろうが!」  ひとりの記者が即座に叫ぶと他の記者たちも口々に叫んだ。叫んでいる側は大勢で教団側を追い詰めているつもりなのだろうが、スガヌマは平気な様子でこたえる。 「サコタ師ならここにいらっしゃいます」  スガヌマが誰も座っていない中央の椅子を両手で指し示した。  すると記者たちはさらに大声で怒号を飛ばす。 「いないだろうが!」 「どいつのことだ!」 「だから誰が話すんだ!」  スガヌマは誠実に回答するような顔でこたえた。 「こちらに座っている白髪の老人がサコタ師です」  記者たちはやっと、中央の椅子には見えない教祖が座っているという教団側の主張を理解し、全員が顔を真っ赤にして狂ったように怒鳴りだした。こうなってしまうと、たくさんの怒声が入り混じりひとつにまとまってウワンワンと響くだけで一人ひとりの発言はもう聞き取れない。質問が聞き取れないなら質問にこたえることはできないわけで、スガヌマは悠々と一方的に話しはじめる。 「我々の集会に通う人達でも、最初からサコタ師のお姿がみえていた者は稀です。最初は見えなかった人達も何度か通ううちに見えるようになるのです」  会場にはなおも記者たちの叫び声のかたまりが騒音となって響いているからスガヌマの声は誰の耳にも届かない。それでもマイクを通して各社が撮影している映像には音声が残ることを理解しているらしくスガヌマは、落ち着き払った穏やかな口調でゆっくりと話し続けた。
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