1996年は小鳥教団の年

２

２

　ワンルームマンションの一室で、スガヌマを含めて四人の男女がテレビを見ている。
　テレビの画面にはワイドショー番組のスタジオが映し出されている。
「先日からお伝えしております小鳥教団の資産家子息拉致疑惑についてお伝えします」
　深刻そうな表情をつくった中年の男性キャスターが話している。
「七月一日に資産家ご子息キトウヨシノリさんから報道各社に小鳥教団を糾弾する内容のファックスが送られてきました。こちらにありますのがその際にキトウヨシノリさんから当テレビ局宛に送られてきたファックスです。このファックスによりますと」
　キャスターは手に持った紙を示してから、その内容を読み始めた。
「突然のファックス失礼致します、私は大阪在住のキトウヨシノリと申します。私は先日、小鳥教団に拉致されました。隙をみて逃げだし、警察に保護を求めましたが『帰れ、さっさと行かんと精神病院ぶちこむぞ』と追い返され現在は一人で逃げています。マスコミの皆様のお力で小鳥教団の悪事を公にしてください。私が助かる方法はそれしかないのです。なにとぞよろしくお願いします」
　キャスターは顔を上げてやはり深刻そうな表情で続けた。
「ファックスの文面からは警察の初動に問題があった可能性も考えられます。それではここでキトウヨシノリさんが保護を求めた警察署の前から中継です」