涙の理由(2)

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涙の理由(2)

「あの夜のことではないのです。あなたは、悪くありません。悪いのは、私なのです」  ジルベルトから視線を逸らせ、マリアは居ずまいを正す。 「ラムダさんの怪我がひどくなかった事、とても嬉しかったのです。嬉しくて、ラムダさんにも言葉をかけたかった。ちゃんと嬉しいって、伝えたかった。それなのに私は……。あなたがラムダさんを抱える姿を見て、女としてとても厭な感情を抱いてしまったのです」 「厭な感情……?」 「そんな自分が嫌で、情けなくて。言葉が、出なくなって……。せっかく、あなたが私から顔を逸らさずに、いつもと変わらない態度を見せてくださったのに」  マリアの瞳にみるみる涙が溢れ、頬を伝ってこぼれ落ちた。 「あなたがここに来てくださった事も、とても嬉しかったのに……。肩を抱いてくださった事も、嬉しかったのに。私は、ひどく卑しい……。大好きな友人に、あんな気持ちを抱くなんて……っ」  ジルベルトは目を見張る。  マリアはいったい、何をそれほどまでに悔やむのか。 「マリア、君が泣く理由が知りたい。何故そんなに自分を責める……? 厭な感情とは、何だ?」  
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