後悔

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「マリア……おはよ。今朝も早いのね? 午後まで仕事が無いなんて羨ましい! もっとゆっくり寝てればいいのに」 「ねぇクロエっ」  がばっ、とマリアに寝具ごと覆いかぶさられ、目覚めたばかりのクロエは不意打ちを喰らって目をぱちぱちさせる。 「いきなり何よ、びっくりするじゃない」 「王宮の配膳って、今は誰がやってるの?」 「王宮の食事は王宮内の厨房で作るの。ここからじゃ遠くて運べないでしょう、食事が干からびちゃう。王宮の厨房には毒見係もいるし、配膳だって特別な係がいるはずよ?」 「そ、っか……」  そういえば、祖国の王城でも腹違いの兄や妹たちには毒見がついていたのだっけ。  ——使用人仲間に顔がきくクロエに頼んで配膳係を譲ってもらい、宰相様に彼のことをこっそりお伝えできないかと思ったのだけど。私のような下働きが王宮に入るのは簡単じゃなさそうね? 「ねぇクロエ。どうにかして宰相様に会えないかしら?!」 「マリア。あなたまさかあの囚人に丸めこまれて、そんな事言い出したんじゃ……」 「丸めこまれたんじゃないの、私が勝手に信じたいだけ。彼が嘘を言っているのかどうかは、宰相様にお伝えしてみればわかるでしょう?」 「彼、ですって? マリア、あなたおかしいわよ。囚人の言うことを信じるなんて!」  少し怒ったふうに、クロエは寝室を出て行ってしまった。  ——クロエにも頼れないとなると。知り合いも少ない私に、何ができるの……。  沈みそうになる心を奮い立たせ、着替えを済ませて外に出る。トボトボと薔薇の庭園を歩けば、無意識に王宮へと足が向いていた。
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