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下女の正体 ———*
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「……リズロッテさまっ、やっぱりまずいです!」
「そうですわ! その下女を見られるかどうかもわからないのに、獅子宮殿を覗くだなんて……っ」
エミリオとフィフィーはまるで幽霊屋敷にでも向かうかのような怯え方をしている。ふたり揃って眉をひそめあい、リズロッテのドレスの裾を掴んで後ろに連なっていた。
あろうことかリズロッテは、背丈の倍はありそうな鉄柵に身を乗り出すようにしている。
獅子宮殿はかの冷徹皇太子殿下の居城だ。
こんなところを衛兵に見つかりでもすれば、大公夫人の叱咤叱責どころでは済まされないだろう。
「ですから、あなたたちはついて来ないでって言ったはずです。わたくしと一緒に処罰を受けたって知りませんよ?」
「リズロッテ様は、その下女に会ってどうするおつもりなのですか?!」
「どうって、女の目的を探るのです。アルフォンス大公夫人に相談したって埒が明かないのだから、自分で動くしかないでしょう」
「目的……?」
「会って、糾弾してやりますわ。側室にもなれぬ下女が、何の目的で皇太子殿下を唆すのか」
エミリオとフィフィーは互いにきょとんと目を合わせる。
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