下女の正体 ———*

1/11
前へ
/573ページ
次へ

下女の正体 ———*

   *——————— 「……リズロッテさまっ、やっぱりまずいです!」 「そうですわ! その下女を見られるかどうかもわからないのに、獅子宮殿を覗くだなんて……っ」  エミリオとフィフィーはまるで幽霊屋敷にでも向かうかのような怯え方をしている。ふたり揃って眉をひそめあい、リズロッテのドレスの裾を掴んで後ろに連なっていた。  あろうことかリズロッテは、背丈の倍はありそうな鉄柵に身を乗り出すようにしている。  獅子宮殿はかの冷徹皇太子殿下の居城だ。  こんなところを衛兵に見つかりでもすれば、大公夫人の叱咤叱責どころでは済まされないだろう。 「ですから、あなたたちはついて来ないでって言ったはずです。わたくしと一緒に処罰を受けたって知りませんよ?」 「リズロッテ様は、その下女に会ってどうするおつもりなのですか?!」 「どうって、女の目的を探るのです。アルフォンス大公夫人に相談したって埒が明かないのだから、自分で動くしかないでしょう」 「目的……?」 「会って、糾弾してやりますわ。側室にもなれぬ下女が、何の目的で皇太子殿下を(そそのか)すのか」  エミリオとフィフィーは互いにきょとんと目を合わせる。
/573ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2810人が本棚に入れています
本棚に追加