2805人が本棚に入れています
本棚に追加
——この先は『エタニティ・プロンプト』がなければ入れない。
二年近くもいれば皇宮のあらかたの事情は把握している。仕方なく、鉄格子から獅子宮殿の中庭をそっと覗き込んだ。
どこからともなく涼しげな水音が聞こえ、耳を澄ませる。どうやら近くに噴水があるようだ。甘やかな薔薇の香りが、風に乗ってリズロッテの鼻腔にまで届いた。
色とりどりの薔薇が咲き乱れるバラ園に目を凝らすと、白いタイル張りの噴水のたもとに二つの影が動くのがわかった。
漆黒の礼服を纏った背高い青年と、もう一人は淡い藤色のワンピース、緩やかにウェーブがかる珍しい髪色の若い女性——。
「ジルベルト殿下……それにあの女……!?」
最初のコメントを投稿しよう!