失踪事件の結末

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 マリアに近づいた侍従が近くに立っていた別の侍従に目配せをする。その侍従はひどく慌てたふうに廊下の奥へと走り去った。 「地下牢の独房にいるジルベルトが、こ……これを、宰相様に見せろと」  マリアは、ジルベルトから預かったペンダントを胸元から取り出した。王宮の豪奢な明かりの下で煌めく銀の鎖は——赤黒い血に染まっていた。  それを一目見た侍従の顔が、見る間に青ざめていく。 「なっ……何と言う事だ……。地下牢だ! 地下牢に医者を遣れ、急ぐのだ!!」  侍従がマリアの手の下で揺れるペンダントを取り上げようとしたが、マリアはそれをぎゅっと掴んで離さない。 「それはお前のような者が触れられる代物ではない。こちらに寄越しなさい!」 「嫌です! ジルベルトから宰相様にお渡しするように言われたのです。あなたになんか、絶対に渡さないわ……!」
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