失踪事件の結末

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「メイド風情の小娘が小賢しい。こちらに寄越せと言っているのが聞こえんのか!」  マリアの手から、侍従が無理矢理にペンダントを奪い取ろうとしたその時だ。 「ジルベルトが見つかったと言うのは本当か?!」  艶めいた声がして、周囲の者が一斉に道を開ける。  ——宰相、様……?  その声を聞き、マリアは警吏の制止を振り払って立ち上がる。マリアの視線は、若く美しき宰相、ロベルト・バルドゥの姿を捉えた。皆が固唾を飲んで見守るなか、マリアは彼の元へと歩き、大切そうに胸にあてたペンダントを差し出した。 「宰相、様……。お願いです、ジルベルトを助けて……」  ロベルト・バルドゥの目に飛び込んだのは——。  ウエィン国内で行方不明になっている帝国の皇太子、ジルベルト・クローヴィスの、(いのち)にも等しい彼の『王印』。  そして。お仕着せの白いエプロンを真紅の血に染め、その『王印』を涙ながらに差し出す若いメイドの姿だった。
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