理不尽な処遇

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「そのことは広めずに黙っておいてね? 宰相様のお知り合いの……ジルベルト……様? が人違いで捕まって拷問まで受けていた事が国内外に知られれば、宰相様はおろか国王様の信頼失墜にもつながるのですって。私もだいぶ脅されたのよ。『口外すれば命を失うものと思え!』って、もうあなたに話しちゃったけどね?」  ふふっ、とマリアは無邪気に笑って見せた。 「マリア……あなたの呑気さにはほとほと呆れちゃう。誰かが漏らしたことをあなたのせいにされて、殺されたって知らないんだからっ」  マリアが王宮に押し入り、ジルベルトと名乗る男の存在を宰相に伝えたのはつい昨日のこと。  ジルベルトがちゃんと助け出されたかどうかも知らされぬまま、唐突に今朝、ウェイン城からの追放という処遇を言い渡されたのだ。 「……今更遅いわよ。誰を口止めしたって噂はきっと広まるわ」  剣幕を胸中におさめたクロエは、荷造りの手を動かし始めたマリアの隣にぺたんと座った。   「それで、いつ発つの?」 「今夜」 「何それ……そんな急に?! 昨日今日のことなのにひどすぎるじゃない……」 「もう言わないで? 寂しくなっちゃうから」 「あんたの処遇には納得がいかないけど——。彼を助けたマリアまで口を割れば殺されるっていうくらい、そのジルベルトって人が要人だったってこと? ジルベルトって何者よ」
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