理不尽な処遇

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「さあ……よくわからないの。メイド長様にお尋ねしても『やんごとなき身分のお方で素性を伏せておられる』としかおっしゃらなくて」    聞くところによると、マリアは色々と罪深いらしい。  まず——そのやんごとなき身分でおられるジルベルトを『呼び捨て』にした不敬。  彼の持ち物(とても大切なものだったらしい)に勝手に手を触れた不敬。しかもその「大切なもの」を勝手に持ち出した不敬。  ニワトリを故意に放って周囲を騒然とさせた挙句、下級メイドが入ることを禁じられている王宮に忍び込んだ罪。  侍従長(あの年配の侍従、使用人のトップに立つ偉い人だったらしい)の言い付けを拒絶し、真っ向から歯向かった罪。  狂人とも取れる不適切な格好(とにかく必死で気付かなかったけどお仕着せが血まみれだった)で宰相の前に出た不敬と、じか談判した罪。  ——つらつらと並べればこんなにある。 「宰相様の口利きで免れたけれど。メイド長様がおっしゃるには、これだけ罪を重ねれば絞首刑か流刑労働になってもおかしくなかったそうよ。それにね……今まで私、仕事を失敗してばかりだったから。メイド長様が引き留めて下さらないのも無理はないの。もっと早くお城を追い出されていたって文句は言えなかったのに、今まで置いてもらっていただけでも有り難いって思わなきゃ」
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