理不尽な処遇

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 ——あなたの命が助かったのなら、私はそれで良いの。  月あかりの下で空を見上げていたジルベルト。  下働きのマリアに優しい笑顔を見せてくれたジルベルト。  マリアの頬に指先でそっとふれたジルベルト。  あの瞬間、マリアの心は彼の青い瞳に奪い取られた。  ——誰かに会いに行くのを待ち遠しく思ったの、初めてなんです。もう二度と会えないってわかってる。でもせめて最後にもう一度だけ……あなたの笑顔が見たかった。  この胸の痛みが何なのかわからぬまま、マリアはジルベルトへの想いをぎゅっと封じ込めるのだった。
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