ジルベルトと天使——*

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「フェリクス……君が早朝から何の用だ」 「その顔はなんです? 殿下の欲しがる情報を手に入れて来たんですから、少しは褒めて欲しいな!」 「ここは皇太子の寝室です。いくらフェリクス公と言えども勝手に立ち入られては困ります」フェルナンドは眉根を寄せる。 「とっとと傷を完治させて執務室に戻って頂きたいものだが、今は非常事態でしょう? 僕が殿下の寝室に入ってはいけないという決まりも無いはずだ。それに殿下が行方知れずのあいだ、僕も密偵を()って随分探したんですから」  フェリクス、と呼ばれた青年はジルベルトの母方の従兄弟だ。フェルナンドと共にジルベルトの片腕として動く有能な部下の一人でもある。 「……それで。マリアがウェイン城を追放されたというのは本当なのか?」 「ええ。僕が送った間者の情報は確かです。ひと月ほど前、殿下が地下牢から救い出された翌日。そのメイドは追われるように馬車で城をあとにしたそうです」 「俺の寝所までわざわざそれを言いにきたのか?」 「いやいや、僕は殿下の様子を見にきただけですよ。と言うか、僕にあたらないでくださいね?」    興奮したジルベルトが寝具を跳ね除け、がばっと起き上がる。
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