マリアの好きなひと

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「きゃ……」  ——ドサッ!!  何が起こったのかわからぬまま暗闇の中で目を開ければ——二メートルほどの高さの井戸の底から夜空を見上げている自分を知った。  やられた。  そう思ったけれど、もう遅かった。井戸の上に誰かの気配がしたが、すぐに消えてしまう。 「待って……!! ここから出して……」  叫んではみたものの、マリアの声は井戸の中に響いただけ。 「誰か! いませんか?! 私はここにいます、どうか助けてっっ」  必死に叫ぶ声も、壁の中にすうっと吸い込まれてしまう。  ——ひどい、どうしてこんなこと……っ  井戸の壁を叩いたり、叫んだり。この状況に争ってみたものの、マリアの努力は虚しく、ただ暗闇と静けさだけが時間とともに冴え渡っていく。
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