マリアの好きなひと

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 怪我は治りましたか。  元気にしていますか。  先ほどまで綺麗に見えていた月も、マリアの頭上からすっかり姿を消してしまった。  果てしなく続きそうな虚無の時間を、マリアは姿なきジルベルトに話しかけることでやり過ごそうとした。  あなたの家はどこにあるの。  今頃、何をして過ごしていますか。  ———とても素敵なあなただから。綺麗な恋人と一緒にいるかも知れないわね……?  そうするうちに。  昼間の仕事疲れも手伝って、眠気とともにマリアの意識は遠のいていった。  *  マリアを探しに来た店主に助け出されたのは、店仕舞いが済んだあとの深夜だった。  「なぜ井戸になんか行ったんだ!?」
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