マリアの好きなひと

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 当然のごとくさんざんに叱られ、お前は役立たずの厄介者だ! と罵声を浴びせられた。  他の店員たちへの見せしめのように怒鳴られるマリアを、ミアたち三人は愉快なお芝居でも見るように眺めた。「井戸の水を汲んでこいと言われたので」とマリアがいくら訴えても、ミアたちは知らぬ存ぜぬだ。  あげく。  三人はマリアが与えられている屋根裏部屋にまでついてきて、これでもかとダメ出しをする。  ——わかってる。ミアたちは、私を苦しめることで仕事の憂さ晴らしをしてるんだって。 「私たちが水汲みに行けと言ったですって? 言いがかりよ、妄想じゃないの?」 「そうよっ。妄想癖のマリアだからね」 「ほら、ついこの前だって。黒騎士さまたちがお店に来たとき……」 「そうそうっ! 帝国騎士団小隊長のサイモン様! マリアったら、ちょっと優しい言葉をかけられたからって、いい気になっちゃって」 「サイモン様が、マリアに気があるとでも? まさかそれも妄想??」 「にやにやしちゃって、気持ち悪いったらありゃしない」 「帝国騎士団といえば、超〜エリート! かっこいいわよね〜。あの黒い隊服も惚れ惚れしちゃう」 「ねぇ、マリア?」  窓際に正座をさせられ、うつむくマリアにミアが会話を振ってくる。マリアの頬は泥だらけ、服は井戸に落ちて汚れたままだ。
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