マリアの好きなひと

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 マリアの目の奥には、もう手の届くことのない美しい青年が映る。  『好きな人』とは言ったものの、マリアはこの気持ちが恋なのかなんなのかまだはっきりとはわからない。ただ、このままミアたちのいうがままになるのは納得がいかなかった。 「ええっ! ちょっと、今の聞いた?! 好きな人ですって!」 「またマリアの妄想が始まった」 「あんたにそんないい人、いるはずがないじゃないっ」 「そうよ。いたらここにっ! 私たちの目の前に連れてきてほしいわ?」 「連れて来られるわけないじゃない、なんだから〜っ!!」  ひとしきりマリアを笑ったあと、気が済んだのか三人は自分たちの部屋に戻って行った。 「……いるもの」  悔しさをぶつけるように、膝の上に並べた両手の拳をぐっと握り直す。 「妄想なんかじゃない……。ジルベルトは、ちゃんといるもの」  堪えていたものが熱になって、マリアの目頭からこぼれ落ちた。  ——だけど。  どんなに悔しくても……妄想じゃないって歯向かいたくても。  ジルベルトをミアたちの前に連れてくる事なんか、できやしないのだから。
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