長雨と小さな命

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「遅くなって申し訳ありません。この格好のままじゃお客様に失礼なので、部屋で着替えてきても良いでしょうか」  チッ。  店主の舌打ちが聞こえたが構わずに背を向けた。 「どうしてあんなに汚れるのよ?」 「泥団子でも作ってたんじゃないの」  泥だらけのマリアの姿を見て、ミアたちが(いや)な笑みを浮かべている。  ホールを出るやいなや、マリアは一目散に部屋に戻り、素早く着替えを済ませた。そして向かった先は——。 「みゃー」  マリアの姿を見付けた仔猫が愛らしい声を出す。宿屋からここまで連れてくるあいだ、抱かれたマリアの胸のあたたかさに気分を良くしたようだ。  マリアが落ちた井戸のそばに小さな横穴があり、マリアに連れて来られたまま仔猫はおとなしく丸い毛玉になって待っていた。
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