【コミカライズ連載中】雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります！

長雨と小さな命

「私の言いつけをきちんと守れるなんて。あなたは頭がいいのね？」

　お腹すいてるでしょう……と、小さな器を差し出す。先ほど厨房でこっそり拝借した残飯の魚の白身を水に浸したものだ。

「こんなものしかなくてごめんね。次に来るときはミルクを持ってくるから……私の仕事が終わるまで、ここで待っていてくれる？」

「みゃー」

　彼は、消え入りそうな声で返事をしてくれたけれど。
　マリアが魚の入った器を仔猫の前に置いても、毛玉は丸まったままで少しも舌を付けようとはしないのだった。