幸せなぬくもり

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 マリアは自分が持っている薄いタオルケットの中でも、いちばん地厚そうな布を抱えた。それから小さな薬箱も。  ——さっきは急いでいて気付かなかったけれど、体のどこかに怪我をしていて、ご飯が食べられないくらい辛いのかも?  誰にも見られないように気を付けながら階段を降り、裏庭に出る。そこから伸びた草の中を少し行けば、あの井戸……仔猫がいるはずの場所だ。    仔猫が横穴の中で大人しく丸まっているのを見て、マリアの鼓動はようやく平静を取り戻す。 「本当にいい子! 元気になるまで、ここから離れちゃダメよ……?」  そっと仔猫を抱き上げれば、 「みゃー」  マリアを認めているのか、仔猫はもう抵抗を示さない。体中をじっくり確かめれば、後ろ足に擦り傷があった。
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