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枕元にブラシを置くと、ゆっくりと寝台に横になる。
宵闇のまどろみに浮かぶのは、乱れ髪に無精髭を生やした、それでもマリアの瞳の奥に焼き付いて離れない美しい囚人の姿だ。
——無精髭でも乱れ髪でもないあなたは、いったいどれほど綺麗なの……?
甘美な妄想に浸っていれば、昼間の疲れも手伝ってぬるい眠気が首をもたげてくる。
ゆっくりと閉じていくまぶた——薄い屋根に打ち付ける雨音のなか、マリアは静かに意識を手放した。
*
次の日——仔猫のジルベルトは警戒心をあらわにしていた。
お腹を見せるほど心を許していた仔猫が、だ。
寝床から抱き上げようとしたマリアの手を、仔猫は思い切り引っ掻いた。
マリアも驚いたが、優しく声かけをして身体をそっと撫でれば「にゃー」。
いつも通りの甘えた声を出しはじめる。
抱き上げて膝の上に乗せ、よしよし……と撫で続けていると、マリアの匂いに安心したのか、まるで落ちるようにすうっと眠るのだった。
その次の日、仔猫はマリアを更に驚かせた。
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