雨がうばうぬくもり

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 寝床に仔猫の姿がない——こんなことは初めてだった。  その日は半日待っても姿を見せず、とうとうどこかに行ってしまったのだろうかと諦めかけたとき、夜になってマリアがおそるおそる寝床を覗けば「にゃー、にゃー」。  マリアの姿を見つけた仔猫が嬉しそうに駆け寄り、マリアの足元に身体をすり寄せてくる。  ——寝床にいたり、いなかったり。行動範囲が広がっただけなのかしら?  数日、そんな事が続いた。  仔猫が急に行動的になった事に疑問を抱いていたマリアだが、突然にその理由を知ることになる。  真夜中から雨が降り続く朝、マリアが仔猫の様子を見にいくと。  寝床に仔猫の姿はなく、仔猫が気に入っている食事の皿が真っ二つに割られていた。  陶器の皿を他の動物が壊せるとは思えず、明らかに人為的なものだとわかる。  マリアは、やっと気づいた……ここしばらく仔猫の様子がおかしかった理由を。
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