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Prologue
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かつて、シャルロワ国にはたいそう慈悲深い姫がいた。
その名はリュシエンヌ・マリーア・シャルロワ。
母親は王の妾であったため、母親とともに王城の離塔に幽閉され、卑しい血筋の王女としてシャルロワの王族たちから虐げられていた。
最愛の母親が崩御すれば、彼女は十四歳という若さにもかかわらず、わずかばかり遺された財産をも貧しい農民や病人たちに分け与えた——それは家族数人が数日分食べるほどにもならない金額であったそうだが——幼き王女は、シャルロワ国を支える農民たちから絶大な支持を得たという。
そののち、帝国軍との戦争によって祖国が滅亡したあと。
戦火を逃れ生き残った、シャルロワ王家の血を引くただ一人の王女、リュシエンヌの行方を知る者はいない。
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かつて西と東の諸国を支配するアスガルド帝国に、若き有能な皇太子がいた。
その名はジルベルト・クローヴィス。
帝国はウエストエンパイアとイーストエンパイアの中心に位置するシャルロワ国を属国とし、国領を手の内におさめようとしたが、黒い思惑を持ったシャルロワの国王はその申し出を拒んだ。
帝国のためだけに生き帝国のためだけに戦う皇太子は、シャルロワ王族を根絶やしにするため、冷酷とも言える血の剣を振るった。
だがシャルロワ王族の血縁のなかでただ一人だけ、皇太子ジルベルトの剣を逃れた者がいた。
王城の離塔に幽閉されていた王女リュシエンヌだ。
帝国がシャルロワ国領を手中に収めてから三年が経った今でも。
皇太子ジルベルトは、雲隠れした王女を血眼になって探し続けているという。
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