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星が落ちた夜
「あ、流れ星!」
隣の彼氏が、ぎゅっと両手を握って何やらごにょごにょと呟いている。
その様子を、僕は缶ビールを飲みながら眺めていた。
三十秒くらいしてから、彼氏は自分の手をほどいて僕に言う。
「何だよ、お前はお願いしないの?」
「しない」
「ロマンが無いなー」
「落ちた星に願い事するってどうなの? 落ちちゃったのに、願い事を叶える力ってあるの?」
「もー! そういうこと言う……」
「で、何を願ったの?」
僕の言葉に、彼氏は少しだけ頬を赤らめて言う。
「……好きな人と、ずっと一緒に居れますようにって」
「……」
僕は黙って彼氏を引き寄せて、可愛いことを言うくちびるにキスをした。不意を突かれた彼氏は真っ赤になる。
「な……」
「そういうのはさ、本人に直接言うべき」
「う、うるさい!」
恥ずかしがって逃げようとする彼氏を捕まえて、腕の中に閉じ込めた。
ずっと一緒に決まっている。
だから、星に願わなくたって良いよ。
落ちた星に願いを叶える力があるのかは分からない。けど、彼氏に恋に落ちている僕になら、いくらだって願いを叶えられるから――。
「ずっと、好きだよ」
耳まで真っ赤になっている彼氏にそう告げる。
いつまでもこんな穏やかな時間を共に過ごしたい。そう思った。
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