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 闇と対照的な色をした雪が、辺りに漂う冷気をことごとく地に押し付けていく。 妙な静けさがこれから起こる事の大きさを予感させるのだった。 「せっかくのクリスマスだと言うのに……」 聖なる夜を妻と幼い娘が待つ自宅で過ごせていないことに 苛立ちを隠せないダグ警部。 忙しなく膝を揺すっていると、ルイディが暗がりから小箱を抱えてやってくる。 「はい、警部はこれをビギナーに渡してください。  中にはGPSを埋め込んであります。  今回の目的は確保ではなく泳がせです。  後ほど位置情報を辿って追いかければ、  潜伏場所を突き止められるかもしれません。  私はいざという時に備えて、展覧室で待機しておきますからぁ」 「承知した。正義の代表として務めを果たそう」 警部の両手に濃密度の重量が加わる。 中身は偽物だとしても、皮膚を伝う感覚は本物の誇る価値に等しかった。
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