さようなら

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さようなら

今日で、俺の人生は終わる。 まだ23歳、せっかく就職できた会社で一緒に出張中の上司に襲われた。 『桐谷、お前ゲイだろ?一回抱かせろよ。具合が良かったら付き合ってやるよ』 「課長、冗談はやめてください。セクハラですよ?」 『脱げ…』 冗談の顔じゃなかった。 そのまま俺を捕まえて、ワイシャツのボタンを引きちぎった。 『やっぱりな…その顔に、綺麗な身体、そそるな』 「いや、だ…やめて…」 あの時もこうだった。無理矢理身体を開かれ俺は壊れた。 恐ろしい記憶は消えてはいなかった。 だけど、俺は強くなった。壊れた心を埋めるため空手にのめり込んだ。 その世界では有名人だ。 俺は無意識に課長の腕を捻り上げ、股間に一発蹴りを入れた。 空手の技は使いたくなかったから、自分を守るため。 『う!あぁぁぁ』 股間を押さえてのたうち回る課長を見下ろしながら震える身体を抑え込む。 『クソ!桐谷!お前なんてクビだ!さっさと出てけ!』 俺は自分の荷物を抱えて走った。 やってしまった… 走って走って辿り着いたのは、廃墟ビルの屋上。 鍵壊れてて、良かった。 なんて気持ちのいい夜だ。 見上げれば満月、見下ろせばネオンの光。 あの光の中に飛び込めば、楽になれる。 俺がいなくなったって、世界は何も変わらない。
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