ミライ・チャンネル

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 13年越しにミライ・チャンネルのカスタマーセンターにコールする。電話が繋がってすぐ、澄まし声で応答する担当女性を思い切り怒鳴りつけた。 「おい! ミライ・チャンネルで司法試験に受かる未来を観たから弁護士を目指したのに、いつまで経っても受からないじゃないか! おかげで俺の人生は滅茶苦茶だ! どう責任を取るつもりだ!」 「お客様。申し訳ありませんが、我が社では一切責任を負いかねます」 「なんだと!? 嘘の未来を観せておいて、その言い草はなんだ!」 「ミライ・チャンネルは未来を『決める』ものではございません。ご視聴当時、お客様が司法試験に合格するという未来は間違いなく存在したはずです。が、試験を受けたからといって確実に受かるわけではないのです。なぜなら、試験に落ちるという未来も同時に存在していたのですから」 「何訳の分からないことを!」 「ミライ・チャンネルでは可能性が0%である未来は映りませんが、1%でも可能性がある未来なら映り得ます。お客様が試験に受かる確率が元々何%だったのかは今更知る由もないですが、その確率は、お客様の取る行動次第で如何様にも変わったはずです」 「ど、どういう……」 「当チャンネルの利用者には、『プロ野球選手になって大活躍する』という極々低い可能性の未来を観た結果、血の滲むような努力の果てにその未来を現実にした方もいらっしゃいます。つまるところ、全てはお客様次第としか言いようがございません」
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