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私は「男」を知りたくてスナックで働き始めたわけだが、肝心の「男」を理解するのは難しかった。
結婚しているのにスナックで女の子と繋がろうとする人、奥さんの悪口を言いながら女を貶す人、未成年だと知りながらもホテルへ行こうと口説く人...。
ママは私たちの味方で、こういう悪いお客さんはさりげなく私たちから離してくれる。
「ホテルなんて行っちゃダメよ!嫌なことされたらすぐにママに言いなさい」と、私たちのフォローもしてくれた。
「お前、歯ガタガタやん!」
「ほんまや、出っ歯出っ歯!」
「てかデブやな〜。痩せろ!!」
酔っ払ったお客様は思ったことをすぐ言う。
私は見た目に自信がある方ではないし、目を引くような可愛い顔でもなければスタイルも標準だった。
歯科矯正をさせてもらえなくて歯並びが悪いことは、1番のコンプレックスだった。
「もー!じゃあもう歯出して笑うのやめるもんね」
「そやそや!微笑んどけ〜」
たまにお客様の言葉がぐさっと刺さることもあるけれど、笑いながらうまく流せるようになったのもこの時期からだと思う。
お金を払っているのはお客様だし、高いお給料を貰っていると思うと、これくらいの我慢は何ともなかった。
そして、私は処女だった。
「早く経験した方がいいぞ〜」
処女コンプレックスも確かにあったから、お客様にそう言われるたびに少し興味がわく。この頃は、私も普通の女の子に限りなく近かった。
スナックで働くのは楽しかった。
常に笑いに溢れていた。
確かに厳しいことを言うお客様もいたけれど、大抵のお客様は「可愛い」と言って褒めてくれたり、「すみれに会いに来たぞ」と私たちとの時間を楽しもうとしてくれる人が多かったからだ。
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