「男」を知りたかった

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そして、分かったことは他にもある。 お客様は話好きの方が多いので、私たち女の子は適切なタイミングで頷いて相槌を入れればそれで良いのだ。 逆に話し上手な女の子は懸念されていたけれど、何も言わなくても笑顔で頷いている女の子は人気だった。 さ:さすが! し:知らなかった〜! す:すごーい! せ:せっかくだから〜していい? そ:そうなんだ! 有名な相槌の「さしすせそ」だが、これさえ使っておけばコミュニケーションは成り立つものだ。 私は会話は上手じゃなかったが、話を聞くことには長けていたのだと思う。 自然と話すタイプのお客様が私を気に入ってくださり、私を指名してくれることも増えた。 気づけば私はそのお店のナンバーワンになっていた。19歳にして。 20歳の誕生日は、ママとママの1番のお客様と同伴した。 高級な和食料亭に連れて行ってくださり、ジョッキの生ビールで乾杯した。 「すみれちゃんは飲める子やろ。俺には分かる」 同伴後に出勤して、多くのお客様にシャンパンを開けていただき、先輩方には花束をいただいたいた。 この誕生日に頂いたChloeの香水は今でも愛用している。 カラオケがあるお店だったので、ハッピーバースデーの歌をママが歌いながら、チーママがホールケーキを持ってきてくれた。 幸せだった。 今までで一番盛大なバースデーだったから。
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