1.「だ、だって、そう言うしかないじゃないぃ……!」

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「何がどうして一体こうなってしまったのか……」  何度考えても答えなど出てこない。そんな不毛な問いかけに頭を悩ませること約一ヶ月。  侯爵令嬢ドロシー・ハートフィールドは寝台にある枕に顔をうずめつつ、一人うなっていた。  ロゼア大陸にある大国ネイピア王国。そんな大国の名門侯爵家ハートフィールド家。それが、ドロシーの生まれた家である。  普通ならば社交に精を出すのが令嬢と言うものだ。しかし、ドロシーはその屈指の美貌の所為で人を苦手とし(特に男性)、それゆえに引きこもり生活を送ってきた。……半年とほんの少し前までは。  十ヶ月ほど前。ドロシーは結婚した。相手は同じく引きこもりの男性であり、名前はルーシャン・ネイピア。この王国の第二王子で、別名ひねくれ王子。そんな彼とは十二歳の時に婚約し、以降一度も顔を合わせることなく結婚した。  とはいっても、結婚して三ヶ月は彼に会うことが出来ず、毎日毎日王城に通う羽目に陥った。それがいわば脱・引きこもりだったのだろうが、ドロシーからすれば面倒なことこの上なかった。通い詰める理由も「薄情な妻だと思われないため」という何とも現実的な理由だったのも関係している。  そして、ドロシーは結婚して三ヶ月。ようやく夫となるルーシャンと対面することが出来た。  ようやく対面することが出来た彼は大層容姿が整っており、それこそドロシーの隣に並んでも見劣りしないほど。そんな彼に「離縁前提の結婚生活」を突きつけて、約七ヶ月。  ドロシーは史上最悪と言っても過言ではないピンチに陥っていた。
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