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頭にガンガンと響く警告に従い、走り出す。ただひたすら走る、走る、走る。
目の前に螺旋階段が見えたため、考える間もなく今度はひたすら降りていく。そうすると、ふと下の階でも同じように階段を駆け降りている人が見えた。
追い掛けてくる者以外に誰かいる。いや、追い掛けてくる者などいないのかもしれない。ただ、何か衝動に駆られて走っていただけ。もしかしたら、前にいる者を追い掛けていたのだろうか。
心が緩み、声が出た。
だが、階下に向かって叫んでも返事はない。ただ、階段を降りる音だけが響くだけ。聞こえていないのかと追い掛ける。クルクルクルクル、果てしなく階段は続き前を行く者には追いつかない。
『……オイデ…………コッチヘ……オイデ』
バクバクと鳴っていた心臓が一気に冷えた。
手すりに身を預けて息を整えようとしていた時、螺旋階段の先を走っていた者が突然こちらを見上げ何事か呟いた。
赤くギラギラした目に、びっしりと張り付いた緑の鱗。全身はぐっしょりと濡れていて、明らかに普通ではないソレは誰か。
逃げろ、逃げろ、逃げろ。
時がくるまで、それまで逃げろ。
それは誰かと交わした約束。
窓を見れば、白ずんだ空に微かに太陽の光が見え始めていた。
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