一 悪夢

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「あれ……俺なんでこんなに急いでるんだろう? はっ、はっ、はっ、はっ」  段々と頭が回ってきた万里が、ようやく急ぐ意味がないことに気付いたのは校門をくぐってからだった。 「おう、万里! 今日は珍しくギリギリじゃないんだな。本当、顔だけじゃなくて運までいいとか羨ましすぎるぞ。今日は十分前行動しなきゃ遅刻にされる理不尽藤田が校門当番だ」  校門の前に仁王立ちする先生を顎でしゃくって、友人が万里に声を掛けてくる。いつもの万里なら時間ギリギリでアウトだっただろうが、今日は無駄に急いだため余裕があった。 「おっ、ラッキー。なんかこういう時って虫の知らせっていうのか、夢見が悪くてさ。どうせ知らせてくれるならハッピーな感じで知らせて欲しいのによ。やっぱ、この制服の色が悪いと思わないか。全身黒なんて気が滅入りそうだろう。黒、黒、黒、男、男、男だからな」  万里は他愛もない話をしながら辿り着いた教室で、肩に掛けていたスクールバッグを机に置くと中からオフホワイトのカーディガンを取り出し制服の黒いブレザーと交換する。
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