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「私ね、彼氏と別れたの。
ほんと…何やってるんだろうね。」
嘘。全て嘘。
元々初めから「愛」なんてものはない付き合いだったし、しゃがみ込んでいたのも悲しいからじゃない。だけど、彼にとって私の最後は輝かしいものであって欲しかった。
突然彼は私の手を取り傘も差さずに走り出した。やっぱり胸が痛んだ。
苦しいからじゃない。
「愛してる。」心からそう言いたかった。だけど、言えない。
そんな悲しみと一途な彼に対する今までの私の愚行から胸が痛んだ。
目の前で点滅している青信号が赤信号に変わる。
それでも彼は私の手を引いて走った。私たちに降り注ぐ雨もクラクションを発する車も、全て時間が止まっているようだった。この世の美しさに、涙が溢れた。
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