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「私ね、彼氏と別れたの。
ほんと…何やってるんだろうね。」
俺は咄嗟に持っていた傘を投げ出し鈴音の手を取る。そしてそのまま2人でずぶ濡れになりながら走った。鈴音は俺に手を引かれるまま付いてきて、俺はただ、ただ誰もいない彼女の涙が見えない場所へと目指す。
そんなやつなんか忘れて、俺を好きになればいいのに。
そんなことを思いながら。目の前で点滅している青信号が赤信号に変わる。
それでも俺は鈴音の手を引いて走った。俺たちに降り注ぐ雨もクラクションを発する車も、全て時間が止まっているようだった。
そして、彼女の心臓も止まった。
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