ヒーローの秘密物語

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「それじゃあ頼んだぞ!!」 研究員たちの見張りを奨に任せ栄輝はアメーバを探しにいく。  「アメーバがいそうなところは・・・」 カードにあるマップでそれらしきところに目星を付けると、その前に確認しておきたかったところへと足を運んだ。 こちらは目的地とは違うが、栄輝にとっては何よりも重要な場所だった。 「・・・ここか? 吸収された活力が保管されているのは」 大きなガラス張りの丸いケースが部屋のど真ん中にある。 オーロラのようなオレンジの揺らぎが保たれていて神秘的だ。 ただ咲良に活力を戻すにはどうすればいいのかは分からない。 一つずつ塊のようなものでもあれば分かりやすかったが、どうも見る限り気体か液体のような状態らしい。 ―――これが活力で間違いないだろうな。 ―――後で奨とここへ来よう。 活力の部屋にあたりをつけ、今度は急いでアメーバのいる部屋へと向かう。 「ビンゴ・・・!!」 アメーバは数体しかいなかった。 完成されているアメーバが5体程いて、もう5体が作られている途中なのかまだ小さい。 その完成されたアメーバを5体解放した。 「奨のいる部屋へと誘導しないとな」 変身スーツを着ている栄輝にとってはアメーバを誘導することは容易い。 だがスーツの効力が以前と同じか分からないことから、念のため距離を取りつつ奨のいる部屋へと急ぐ。 「奨!!」 「栄輝! アメーバは連れてきた?」 「あぁ!」 最後の力を振り絞って起き上がろうとする男を奨が蹴り飛ばそうとしたのを止める。 「どうして止めるの!?」 「ちょっと役に立ってもらおうと思ってな。 それよりアメーバをこの部屋に入れたら隔離する! その前に奨も部屋から出てくれ!!」 あとは研究員たちの持つ活力を吸うため、アメーバが自動的に部屋へ入るだろう。 男がアメーバの能力の射程に入らないよう注意し、二人は活力が保管されている先程来た部屋へと向かうことにした。  「ここは・・・? もしかしてこれが活力の塊?」 「塊って言っていいのか分からないけどな」 「確かに何かの薬品みたいだね」 「この中身を活力を失った人々に戻すことはできるのかな。 おい! どうすれば元に戻せるんだ!?」 ぐったりする男に聞いてみるも返事はない。 「もしかして活力を奪われちゃった?」 「おい! 起きろ!!」 「寝させてくれぇ、昨日は二時間しか寝ていないんだよぉ・・・」 「・・・」 栄輝が強めに頬を叩くと男は目を覚ました。 「赤いボタン・・・」 「赤いボタン? それを押せばいいんだな!?」 「・・・」 男はそれだけ言うと再度ぐったりし、いびきをかいて寝始めた。 もうどれだけ揺すっても起きそうになかった。 「まぁ、いいか。 男たちの活力を吸い取る前にこの活力を全て解放したいんだ。 とりあえず赤いボタンを探そう」 「おっけー!」 二人は手分けして赤いボタンを探す。 ただどうやら赤いボタンは一つではなく、どれを押したらいいのか分からない。 「栄輝! これじゃない? 押してもいい?」 奨は一際厳重にケースで囲ってある赤いボタンを指差していた。 「自爆装置とかでないならそれな気がするな。 思いっきりいけ!!」 「了解!」 奨がボタンを押すと真ん中にあった丸いケースが作動した。 オレンジの気流が流れ外に逃げていくのが見て分かった。 「これで持ち主の元に戻るか分からないけど、俺たちができることはやった。 アメーバはそろそろ男たちの活力を吸い始める頃だ。 アメーバが逃げ出さないよう部屋のドアを閉めてきてくれ!」 「分かった!」 奨を行かせ栄輝はこの研究所の電力をシャットダウンさせようと電気室へと向かった。 「・・・おそらくこれか」 頃合いを見計らい栄輝は電力供給を止めるボタンを押した。 うるさかった機械音が徐々に消え電気も全て消える。 これで新たにアメーバが生まれることもないはずだ。 「終わった・・・」 廊下へ出ると丁度奨と合流した。 「栄輝! いいタイミングだったね! アメーバは美味しそうにあの人たちの活力を吸い取っていたよ」 「そうか。 ならよかった」 「『もう働きたくねぇー。 研究するのも面倒だー』みたいなことを言ってた!」 楽しそうに笑う奨。 それに栄輝も安堵した。 これでこの研究所の男たち以外の人に活力が戻ったことだろう。 電気を復旧させる気力もない男たちだから、彼らに活力が戻る心配もない。 「じゃあ俺たちもここから出よう。 おそらくこの研究所の扉はまだ開いたままのはずだ」 そうして二人は入口へと向かった。 「・・・これで本当に終わりだね」 「あぁ」 「僕たち輝けたかな?」 「俺たちは最後まで頑張ったよ。 ヒーローの存在理由は失われ、割のいいバイトは失っちまったけど」 「確かに、明日から節約しないと。 ヒーローって頑張っても全ヒーローに向けた賞賛があっただけなんだよね。 僕たちは正体を隠して過ごさないといけなかったから」 「そうだな」 「・・・本当は誰も自分の活躍を見てくれていないっていうのが寂しかったんだ」 切な気な表情を見せる奨に言った。 「俺は奨がたとえスーツなんてなくても本物のヒーローだと知ってるよ」 「ありがとう。 栄輝もね」 「はは」 この後は入り口にいた二人と見張りを研究所の中へと放り込みワープできる箱を奪い取った。 研究所の扉を力で閉じ二人は元の場所へ戻ったのだった。
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