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「ワシは罠にはめられたんだ。ただ元気づけるために、尻をさわっただけなんだ」
情けない声で社長は言う。社長は同情を誘うとき、いつもこんな声をだす。けど、私にはまったく響かない。
「でも、相手は女性社員ばっかでしょ。私利私欲ですよ」
「バカもん! チミは男の尻をさわれと言うのかね。ワシにそんな趣味はない!」
迫真の表情で断言されても困る。
とはいえ、このまま床に転がしておくのも、なんだかかわいそうに思ってしまった。仕方なく私は社長の首を拾いあげ、自分の部署に向かう。
自分のデスクの上で、見覚えのあるの首が泣いていた。
「かわいい顔が台なしですよ」
私は優しく彼女の頭を撫でてあげた。その顔は、取引先の美人社員であった。私が首ったけになっている人だ。
「困るねー、キミ。その首、いきなり落ちてきたんだけど」
課長が面倒くさそう説明し、社長の首を一瞥する。
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