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会社の自分のロッカーを開けると、首が落ちてきた。
社長の、である。
「社長なにしてんすか? 覗きですか?」
ごろごろと転がっていく社長の首を見おろしながら、私は気さくに尋ねる。
「なにを悠長なことを言っとるんだ! チミは!」
不動明王に似た顔の社長は怒ると、さらに怖い。
私も昔はよく泣かされたものだ。
が、今はそんなことなどない。社長の首が落ちても動じないぐらいの度胸はついている。
「社長の首が落ちたんだぞ! 拾うのが常識じゃないのかね」
「いやいや。それは社内ルールでしょー。押しつけです。『社内の常識、社会の非常識』です。このご時世、社長の首が落ちたからって、拾わない会社なんてごまんとありますよ」
「なんだと!」
社長は真っ赤な顔で、私をにらみあげる。
「それに社長はもう社長じゃないじゃないですか。首になったんですから。聞きましたよ」
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