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チョンマゲ幻想
私淑する宮城谷昌光氏(1945~)の一連の中国古代偉人小説には、紀元前から、古代中国には、
『人前で頭頂をさらしてはならない』
といった禁忌や風習があったことが散見されます。
ですから、頭頂部を隠す……ために、冠をかぶるのです。
ただ、あくまでも、中国大陸では、冠をつけるのは、当時の貴人たちだけです。
このような風習や慣行は、当然のことながら、中国大陸から直接、あるいは半島(朝鮮)を経由して、古代の日本列島に伝わったと考えられています。
日本では、冠や烏帽子をかぶるため、髪を纏めてその中に入れ込みました。
そのたばねた髪を、髻といいます。
紐でくくるなどして、上に向けて立てていただけなのです。
実は、日本では、当時の貴人だけではなく、庶民もみんな烏帽子を着用していました(男子だけです)。
貴人は、立烏帽子や冠。貴人に支える身分の低い者(傘持、沓持、車副など)は、平礼烏帽子。
庶民は、萎烏帽子、折烏帽子などがあります。
奈良時代、平安時代を通じて、日本では、烏帽子をつけなかった男子は、僧侶と罪人だけなのです。
あの山伏でさえ、兜巾で頭頂を覆っていたのですよ。
みなさんの中で、奈良・平安時代の物語を書くときには、
『当時の男子は、僧侶と罪人以下、みんな烏帽子をかぶっていた』
ことを想像しながら書くといいですね。本文にふれなくとも、そう思いながら書くだけで、知らないで書くのとは、かなり違ってくるはずでしょうから。
さて、ではなぜ僧侶は頭頂をさらしたのでしょうか。
一般的には、世俗を離れるから、などといった、もっともらしい、決まりきった解説が多いようですが、それは根本的に違うのではないかと紙葉は考えています。(あくまでも個人的見解です)。
原初的仏教というものは極めて呪術的シャーマニズム的傾向が色濃く、奈良期の仏教にもそういう傾向が多々みられたはずです。
平安期を時代背景にした物語を書こうとして、ここ数年、奈良・平安期の民間伝承やシャーマニズム的儀式、とくに国家から認定されない僧侶たち=遊行聖や放下僧の来歴や伝承などを調べていて、かれらはまさしく呪術者であり、幻術者であったことを理解しました。
つまりは、かれらは分類上、人間ではなかったのです。
だから頭頂をあえてさらすことは、むしろ、異形の者のしるしとして当然の帰結ではなかったかとおもいます。
なお、初期仏教の諸相については、東京国立博物館の東洋考古室長を勤められた美術史家の杉山二郎氏(1928ー2011)の一連の著作から学ばせていただきました。
もっと書きたいことはあるのですが(紙葉説を)、煩雑になるので、あと少しだけ。
頭頂を隠す風習は、中国から伝わってきたと書きましたが、その一方で、列島各地においても、すでに、縄文期、あるいはそれ以前から、「頭」「頭部」を神聖化する思想はかなり根付いていたのではないかとおもっています(あくまでも紙葉説)。
ほら、人間は、この世に誕生するとき、母親の股の間(女陰)から、まず「頭」をみせますね。この世に「頭」から生まれる以上、原始人たちは、ことのほか、「頭」「頭部」に対して、畏敬の念をいだいたはずなのです。
そして、やがて、蘇りであるとか、再生という観念が根づき出したとき、おそらく、「頭部」から蘇る……といった考え、頭から生まれてくる人間は、再生するときも頭から……といった観念が芽生えていたはずだとおもうのです。
すなわち、現代のように、頭部に脳があり、脳内ホルモンが分泌される……機能と、ほぼ同じようなとらえ方をしていたのではなかったか……と、個人的には想像しています。
だから、敵の首を掻っ切る行為は、なにも残虐な行為などではなくて、頭部から相手が蘇るのを防ぐ、呪術的行為そのものではなかったか……と、紙葉なりにとらえています。
さて。
時代は新しくなって、江戸時代、チョンマゲになりました。
髻の部分を、ちょこんと頭頂から前へ向けて、まっすぐのっけています。
これなどは、頭から魂魄が抜け出さないようなフタの役割、視覚的な呪術的作法として、紙葉はとらえているのですが、あくまでも、個人的思考ですよ💬😷
あと、もうひとつだけ。
髻のまわりはきれいに剃っていますね。これを月代といいます。
剃るようになったのは、江戸期にはいってからで、戦国期は、一本一本、ていねいに毛を抜いていたのですよ。
織田信長に会見したことのある宣教師ルイス・フロイスは、兜を脱いだ武士たちが、頭から血を流しているのを見て驚いた、と記しています。
戦で頭を負傷したのではありません。月代をつくるために、髪の毛を抜いたので、その血が流れ出たのです。
さぞかしフロイスさんは腰を抜かしたことでしょうね🤭
↓
では、紙葉チョンマゲを……
これ、携帯(ガラケー)を自分に向けて撮ったのではなく、鏡にうつったのを携帯で撮ったのでした。
カツラをつけるとき、東映(?)の化粧係の方が、
『おっ、大昔の人気俳優に似てますね……』
と、ぼそり。
工エエェェ(´д`)ェェエエ工、一体、誰のことでしょう?
さて、次回は、時代劇ではなく、NHKスペシャルドラマの撮影で、女優の中谷美紀さんから、紙葉が感謝されたエピソードをご紹介しますね……
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