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【NAADA Frontline 短編】「ランクマッチで手の負えないヤツ」
「グラスゾーンの強武器をとろう。」
「Ok」
「あのゾーン、確率的には幻覚と闇堕ちの可能性が高いな。一応他の可能性もある」
「お~俺の得意環境」
走る。草地と小さな崖のゾーンに入った。200m先敵との間に、強武器ボックスが「早く取りに来い雑魚ども」と煽るように鎮座している。
「行っていい?まだ射程届かないわ」
「よし行こう」
腰から2丁の電子ハンドガンを取り出し両手に持つ。骨伝導でハイペースなEDMが流れている。空気が淀んだ。吸い込む空気が煙たい 。
その瞬間、草と岩と青空が歪んだ。そして頭が弄られていく。
「キタキタキタァ!!」
視界がグラグラする。上下感覚が少しバグる。極彩色の幾何学模様が視界を埋める。
「あぁクソだ。この世界終わってる。アイツら死んでしまえばいいのに。俺がすぐに殺してやるよ!」
大地をふむ感覚が消えていく。
敵影がぼんやりと見える。
「全弾当ててやる」
おそらく電子銃の射程に入った。ぼんやりとする美しい視界と無差別的な殺気に溺れつつ、荒く引き金を引いた。
敵の銃口もこちらを向いているが、覚束無いようだ。
「もっと詰めるぜ!」
立ってるかも分からない。感覚で崖をのぼり、跳ぶ。
「早くしね!」
ピコン、1ダウン。
2ダウン。弾が面白いほど当たる。
脳内EDMが最高潮に達する。
「おい、ちょっと退くぞ!多分もう2パーティ来てる!」
知らねぇよ。全部避けりゃいい。
ピコン、3ダウン。4ダウン。1パーティ撃破。そっから2パーティかキツイな。
「ダメだアイツ…堕ちすぎてる」
パーティ仲間も仕方なくカバーに入る。
次の幻覚。雨だ。落ちてくる水滴の中に、大自然やら拷問現場やら無数の景色が映されている。超高解像度の映像の雨が降り注ぐ 。
「退く選択肢は無いよリーダー。侵されて、侵すんだ」
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