落ちこぼれ救済計画

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あれから五年が経った。 私は現在、個人塾を経営している。 最初は、あの弱々しい青年一人だったが、彼が難関大学に入学し、その実績が周りにも認められ、今では中々の有名塾となった。 塾長となった私でも、特定の生徒は受け持つようにしている。 「こんにちわ、樫根君」 「・・・こんにちわ」 誰からも期待されていない子。今目の前にいる高校受験を控えたこの生徒も、その内の一人だ。 樫根(カシネ)君が入塾してきたのは丁度二年前。成績は徐々に上がっていき、今では学年上位の成績を収めている。 そんな樫根君の成績が、最近芳しくない。 今目の前で俯いている彼。そんな彼が重苦しい口調で「あの、一つ相談したいことが」と切り出した。 「どうぞ」 「勉強のことじゃあ、無いんですけど」 遠慮がちに言う彼に対し、私は、自信たっぷりにこう応えた。 「実はね。そっちの分野の方が得意だったりする」 樫根君はきょとんとした顔で私を見る。 私は愉快な気持ちになり、少し窓の外の空を見上げた。 空にはどんよりとした雲があちこちに見える。 そんな中で、天使が落ちていないだろうか。 拝啓、天使様。 私は、今、前を向いて歩けていますかね。
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